アメ車マニア


サバイバル・オブ・ザ・デッド (原題:SURVIVAL OF THE DEAD)

アメリカ2009年度作品


ゾンビ映画の神様、ジョージ・A・ロメロ監督の2009年度作品。
前作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」にチラッと登場した兵隊達が主人公。
直接的な続編ではありませんが、前作の後に起こったエピソードという位置付けです。
メジャースタジオでの映画製作に疲れたロメロ監督がインディペンデント系ゾンビ映画として作ったのが前作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」。
「サバイバル・オブ・ザ・デッド」も同様のノリであり、決して大作映画ではないのでご注意を。

楽園を求めて辿り着いた島では2つの地元住人グループ同士が争っていた。
この地元住民のスタイルがカウボーイ風だったので、序盤からゾンビ西部劇なのかな?と思ってたところ予感的中。
片方のグループは生き返った死体は容赦なく殺す事を主張し、もう片方のグループはゾンビ化した家族や隣人と共存していく事を主張して対立・・・というこの構図は、昔から西部劇でよくあるパターンですね。
ただ西部劇という言葉からイメージするような荒野や岩山が舞台ではなく、草木が茂り、紅葉が美しい森林なので、いまいち西部劇らしい雰囲気が感じられませんでした。
ロメロ監督のゾンビ映画といえば、ゾンビの恐怖の裏に大きなテーマが隠れているのが常でした。
名作「ゾンビ」では消費社会への風刺であり、前作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」ではインターネットメディアへの批判。
ところが今回はその裏テーマが見えてこない。
ロメロ映画としてはこれは大きなマイナスです。
「ゾンビも怖いけど、それ以上に人間って怖い!」っていう強いメッセージが欲しかったです。

あと今回も前作に続いてゾンビの出番が非常に少ない。
人間ばかりがクローズアップされて、最早ゾンビは添え物みたいに扱われています。
ゾンビのロメロとしてはこれじゃあダメですね。
ラストの見せ場に登場するゾンビの数もちょっと少ないし、ゾンビ好きとしてはちょっと不完全燃焼です。
また、前作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」でもチープなCGでのゴアシーンがありましたが、今回はさらに酷い。
前作以上にゴアシーンをしっかり見せちゃってるから余計に嘘くさいCGが目立っていました。
オープニングの頭部破壊に始まり、消火器、照明弾を使ったシーンも酷かった。
リアルに見せられないならチラ見せ程度にしておけばいいのになあ。

でもなぜか後半の方は特殊メイクを使った昔ながらのゴアシーンが多くて楽しかった。
お約束のゾンビによる人体解体シーンなんて、脊椎まで作り込んであってなかなかクオリティ高かったです。
特殊メイクのアドバイザーとしてグレッグ・ニコテロが参加してるんだから、もっと特殊メイクを使って欲しかったなあ。

ところで、ロメロ監督、近年ブームの走るゾンビについては「好ましくない」と言っておきながら、自分もゾンビに変わった事をやらせたくて仕方ない模様。
今作ではゾンビが乗馬したり、その馬を食っちゃったり、車のギヤを切り替えて前進→後退と運転したり。
あと「ランド・オブ・ザ・デッド」に続いてまたもや水中を歩かせてます(でもこれって亜流の「サンゲリア」からの拝借では…)。
「死霊のえじき」の賢いゾンビ、バブちゃんが好評だったからなのか、最近は道具を使わせたりとか余計な事をさせ過ぎな気がします。
せいぜい「生前の習慣が行動に表れる」という自ら決めたルールの範囲でレベルで活躍させて欲しいなあ。
ゾンビみんなが色んな事ができるようになっちゃうと、特別な存在であるバブちゃんのキャラが薄まっちゃうしね。
新しいことを追求するにしても、過去の自分の作品は大事にして欲しいですね。

と、大好きなロメロ監督の事を辛く書いちゃいましたが、ホント、大好きなんですよ。
ゾンビ3部作、クリープショー、ザ・クレイジーズ、マーティン、モンキーシャイン、どれも大好き。
さらにはナイトライダーズなんていうホラー以外の作品も好きです。
だから常に期待しすぎちゃう自分をお許し下さい、ロメロ先生。。。

 


<ダイアリー・オブ・ザ・デッド> <リストへ戻る> <ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド死霊創世記>