アメ車マニア


ランド・オブ・ザ・デッド (原題:LAND OF THE DEAD)

アメリカ2005年度作品


何とびっくり、ユニバーサル映画のタイトルで幕を開けるジョージ・A・ロメロ監督のメジャースタジオ製ゾンビ映画です。
劇場で見た時はただひたすら意思を持つゾンビたちにゲンナリして、最初このページには辛口なレビューを書いたんです。
ところが、DVDを購入して改めて見ると、なかなかどうして、これがいいんですよ。
初見時の低評価は何だったんだ!?
「死霊のえじき」から20年ぶりとなるロメロ印のゾンビ映画に期待過剰だったからなのかなあ。

地球上が完全にゾンビに支配された近未来、生き残った人間達はフェンスで囲まれた城塞都市を築き、その中で暮らしている。
しかし街の中は荒れたスラム状態で、一部の富裕層だけがフィドラーズグリーンという高層マンションで優雅な暮らしを送っている。
この都市を牛耳るのはカウフマン(デニス・ホッパー)。
城塞都市を築き上げたものの、貧富の差を生じさせたとしてスラムの住人達からは敵視されている。
主人公ライリー(サイモン・ベイカー)は住人らの生活物資を求め、ゾンビの彷徨う街を探索する傭兵の一人。
自分への待遇に不満を募らせる傭兵仲間のチョロ(ジョン・レグイザモ)がカウフマンに謀反を起こし、フィドラーズグリーン爆破計画でカウフマンから現金を揺すり取ろうとする。
カウフマンからチョロの殺害計画を命じられたライリーは、仲間のスラック(アーシア・アルジェント)らと共にチョロを追いかける。。。
その頃、街では知恵を持つゾンビが現れ、武器の使用を他のゾンビたちにも促す。
日頃、傭兵達にやられるだけだったゾンビたちは、銃や刃物、鈍器などを手に徒党を組み、城塞都市へと歩みを進めていた。。。

DVDの映像特典でロメロ監督が「今回のテーマは、変化を見て見ぬふりをする人々」だと語っていました。
ブッシュ政権をイメージしたという監督に、ラムズフェルドをイメージして演じたというデニス・ホッパー。
世紀末的な状況に置いても優雅な暮らしに固執する住人達の滑稽さは、同時多発テロ以降のアメリカの社会を表しているんですね。
こういう裏テーマがあるからロメロ印のゾンビ映画は面白いんですよね。

今回の出演者達、ロメロ映画としては過去にないほど豪華です。
その殆どが自ら名乗りを上げたロメロファンの俳優たちだそうで。
映像特典ではサイモン・ベイカーが子供のように嬉しそうに話してましたね。
あとダリオ・アルジェントの娘、アーシア・アルジェントが出てるのもファンには嬉しいところ。
「ゾンビ」のプロデュースを買って出てくれたダリオ・アルジェントとはその後「ゾンビ」の続編で再度手を組む予定だったのが、計画自体が流れちゃったんですよね。
その娘と今になって手を組むとはロメロ監督も粋な事しますね。
悪ふざけ要素も結構あって、写真撮影ブースのゾンビ2体を演じたのは、「ショーン・オブ・ザ・デッド」の監督エドガー・ライトと主演のサイモン・ペグ。
あとトム・サビーニが「ゾンビ」の暴走族スタイルのゾンビ役で出てるのが嬉しい。
今回の特殊メイク担当はグレッグ・ニコテロであり、師匠トム・サビーニに「死霊のえじき」で生首ゾンビにされてましたね。
だから今作ではその仕返しができたって所でしょうか。
ちなみにグレッグ・ニコテロも自ら橋の管理人ゾンビとして出演してます。
他にも後に「ダイヤリー・オブ・ザ・デッド」「サバイバル・オブ・ザ・デッド」で兵士を演じるアラン・ヴァン・スプラングがまたもや兵士役で出てたり、「サバイバル・オブ・ザ・デッド」で少年を演じた子が出演してたりと、改めて見直すと発見があったりします。

でも今回の主要な登場人物は、キャラ設定がちょっと弱かった。
みんな活躍するシーンがあまりなく、印象に残ったのはジョン・レグイザモくらい。
特にカウフマンはもっと悪人であって欲しかった。
「死霊のえじき」のローズ大尉と比べたら遥かにいい人に見えちゃいました。
まあ個人的にデニス・ホッパーって、CMの「アヒルちゃーん」のイメージが強すぎて悪人に見えにくいってのもあるんですが。

特殊効果は、基本的には特殊メイクで部分的にCGを使っているという感じ。
グレッグ・ニコテロ、頑張ってます。
「ダイヤリー・オブ・ザ・デッド」や「サバイバル・オブ・ザ・デッド」のようにCGだらけではないのが好印象。
やはりホラーでCGはイカンです。

そして問題のゾンビの進化について。
道具を使ったり、殺された仲間を見て悲しそうに雄叫びを上げるのは、「死霊のえじき」のアイドルゾンビ、バブちゃんにも通じます。
でもあれは、限られたゾンビのみに与えられた才能であって欲しかった。
全てのゾンビが道具を使ったらバブも普通のゾンビに成り下がります。
他にも「ランド・オブ・ザ・デッド」のゾンビたちには今までのロメロゾンビと違う点がいくつもあります。
水中を移動する…「サンゲリア」で既にやってるのに今さら。。。
本家がパクり屋フルチ先生をパクっちゃだめでしょう。
あと、花火を打ち上げるとそれに見とれて動きが止まる…って新しい特性を打ち出したにも関わらず、ラストでは突如「あれ?花火が効かない…」って。。。
新しさを求めてるのかもしれませんが、はっきり言って蛇足です。
ゾンビというモンスターが持つミステリアスさがどんどん削り取られているように感じます。
ゾンビ映画の様々なルールを作ってきたロメロ先生には、やはりそれを頑なに守り抜いて欲しいなあ。…というのはファンの身勝手なエゴでしょうか。。。

とはいえ、数あるゾンビ映画の中では間違いなく極上Aランクの作品と言えます。
この作品以降のロメロ監督は意図的にメジャースタジオ作品を避け、昔さながらの低予算ホラーを撮っていくと断言しています。
実際、「ダイヤリー・オブ・ザ・デッド」と「サバイバル・オブ・ザ・デッド」も、この「ランド・オブ・ザ・デッド」に比べたらかなりこじんまりしています。
それが悪いとは言いませんが、ロメロ監督の経歴の中で一番の大作であり、ある意味一つの到達点と言える「ランド・オブ・ザ・デッド」は重要な作品の1つであると思います。

   


<死霊のえじき> <リストへ戻る> <ダイアリー・オブ・ザ・デッド>