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エド・ゲイン(原題:IN THE LIGHT OF THE MOON)

2000年アメリカ・ポルトガル合作


「サイコ」「悪魔のいけにえ」「羊たちの沈黙」等、世間を震撼させたサイコキラーのモデルと言われている、実在した殺人鬼エド・ゲインを描いた作品です。
過剰な脚色はせず、事実をベースにした物語展開に派手さはありませんが、そのリアルな作風は薄気味悪さを醸し出しています。

ウィスコンシン州の田舎町プレインフィールドで育ったエド・ゲインは、幼い頃から狂信的な母親によって躾けられてきた。
性的な衝動を悪と教え込まれ、また俗世間から息子を守るために外部との関わりも絶たれていた。
父親と兄を相次いで亡くしたエドは母親と二人で暮らしていたが、間もなく母も亡くなり、天涯孤独となってしまう。

母を偏愛するエドは、母親と似た女性の死亡記事が新聞に載ると、埋葬直後に墓地へと出かけ、遺体を掘り起こしては自宅へ連れて帰った。
そして復活の儀式を行った後、生き返らなかった遺体を切り刻んだ。

そのうちにエドには死んだ母親の声が幻聴として聞こえるようになる。
汚れた女を殺すよう母に命令されたエドは、客と下ネタで盛り上がるバーの女主人マリーを、閉店後の店内で殺害。
自宅で遺体を解体し、剥がした皮膚でマスクやベストを制作、更に陰部を自らのパンツに縫い付け、それらを着用して月明かりの中、踊りに興じた。
その後、マリーの肉はフライパンで焼いて食べた。

いよいよ母親はエドの前に幻覚として姿を現すようになり、またもや女性の殺害を命じる。
次にエドが目を付けたのは、以前から母親に似ていると好意を寄せていた雑貨屋の女主人コレット。
売り物のライフルで撃って自宅へ連れ帰った。

コレットが姿を消し、以前からエドに不信感を持っていた雑貨屋の従業員がエドの自宅へ忍び込む。
するとそこには、内臓を全て取り出されたコレットの首無し死体が、天井から逆さ吊りにされ状態でぶら下がっていた。
また、人体で作られた家具、食器、衣服、ミイラ化した人間の頭部なども発見された。

1968年、エドは有罪とされたものの、精神的な異常があるという事で精神病院へと収容された。
そして1984年にそのまま精神病院の中で病死する。

エド・ゲインは大勢を殺した連続殺人鬼と思われがちですが、実際に明らかになった被害者はこの2人の女性のみ。
それなのにこれほど有名になったのは、その異常な行動があまりに衝撃的だったからなんですね。
この作品では、そんな異常者が作られた背景と、彼の内面を中心に描いています。

最後の逆さ吊り遺体のシーンこそ強烈ですが、解体する場面は描かれていないためグロさは控え目。
殺しの場面も銃を使っているので刺激は少ないです。
でも、まるでステーキ肉のように加工された人肉をキッチンで焼き、その香りに満足げな表情を浮かべる場面など、直接的ではないグロシーンが印象に残ります。
この場面では危うく「人肉ってどんな味がするのかな…」なんて想像しそうになりました。。。

監督は、「ヘンリー ある連続殺人鬼の記録」のジョン・マクノートン監督の元で仕事をしていたチャック・パレロ。
この監督は地味な実録異常殺人鬼ものが好きみたいですね。
エド・ゲインを演じたのは「スペース・バンパイア」で主役のカールセン船長を演じていたスティーブ・レイルズバック。
外見は人の良さそうな小さいおじさんだったエド・ゲインを、控え目な演技と穏やかな表情で演じ切りました。
この作品は自ら製作も担当するほど力が入っています。

ホラー映画としての怖さは全くありませんが、常軌を逸したエド・ゲインはひたすら不気味。
余計な演出はせずにリアルさを狙ったおかげで「実話」という部分が強調されています。
親によって人間性を歪められたエド・ゲインが哀れであり、また一歩間違うと人間はこんなふうになってしまうのか…という不安をも抱かせます。

2007年に再度映画化されたライオンズゲートの「エド・ゲイン」は、事実の美味しいところだけ拝借した完全なるフィクションでした。
あっちは完全にでっち上げられたストーリーなので見る価値はありません。(おまけにつまらない)
見るならこの2000年版をお勧めします!



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