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「悪魔のいけにえ」シリーズ


悪魔のいけにえ (原題:THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE)

アメリカ1974年度作品

 

トビー・フーパー監督の伝説となったホラー映画。
原題は「テキサスチェーンソー大虐殺」の意。

実在の殺人鬼エド・ゲインをモデルに、チェーンソーという凶器を付け加えたことで一度見たら忘れられないほどの衝撃を作り出しています。
殺人鬼の名前はレザーフェイス。その名の通り、人間の皮膚で作ったマスクで顔を隠しています。
重そうな金属のドアがガラガラっと開いて突如現れたかと思うと、元屠殺人ならではの必殺のハンマー攻撃で人間を仕留めます。
鉤状のフックへ食肉のように人間を吊るして解体し、肉は食用として、骨は家具などを作ったりしています。
さらにレザーフェイスの家族全員クレイジーな殺人鬼一家。
捕らえた人間を居間でなぶり殺しにしようとしたり、見ていて心底薄気味悪いです。
直接的なゴア描写はありませんが、強烈な生理的嫌悪感を覚えます。
不気味な犯人一家の言動はもちろん、カメラのフラッシュと連動した効果音、血走った眼球のアップ、前述の金属のドア、頭を殴られてバタバタと痙攣する被害者、鳥の羽や骨が散乱した室内・・・全てが合わさり、耐え難いほどの嫌悪感を与えてくれます。

エンディング、朝日の中で乱舞する狂気に満ちたレザーフェイスの姿と、狂ったように笑う被害者のサリー。
本当に恐ろしいです。。。

    


悪魔のいけにえ2 (原題:THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE PART 2)

アメリカ1986年度作品

 

トビー・フーパー監督が撮った名作「悪魔のいけにえ」の続編。
監督自身、正攻法で撮っても前作を超えるのがいかに困難か分かっていたのでしょう。
続編は「パリ・テキサス」のL・M・キット・カースンを脚本に迎え、コメディ色を強くした悪乗りスプラッターになっています。
しかもこの続編では、特殊メイクが天下のトム・サビーニ!
お得意の血みどろメイクを見せてくれています。

テキサスで連続する作人事件。
被害者はチェーンソーで切り刻まれた無残な姿で発見される。
ある夜、ラジオ局の女性DJストレッチにイタズラ電話を掛けてきた若者が、その電話の最中に殺されてしまう。
翌朝、凄惨な殺害現場に現れたのはテキサスレンジャーのレフティ。
1作目で殺されて行方不明のままの甥っ子を探し、独自に執念の調査を進めている。
情報提供を求めるレフティに、ストレッチは録音した被害者からの電話を録音したテープを聞かせる。
被害者の絶叫の背後にはチェーンソーの音が。。。
レフティはそのテープをラジオで流し続け、リスナーに情報提供を求めるようストレッチに依頼する。
レフティの熱意に負け、渋々了承して放送を続けるストレッチ。
放送終了後のある夜、ラジオ局に人間の皮膚で作ったマスクを被ったレザーフェイスと、チョップトップの兄弟がやって来る。。。

執念が狂気へと走らせるテキサスレンジャーにデニス・ホッパー!!
目には目を、歯には歯を、ということでチェーンソーを両手にレザーフェイスとチェーンソーでチャンバラ対決します。
最高にイカレてて格好いいです!
もう一人のお気に入りキャラが、ストレッチの相方であるラジオ局スタッフのおっさん。
哀愁を漂わせ、最高にいい味を出して大好きです!

シリアスだった1作目とは明らかに空気が違いますが、根底にある狂気が共通しているので続編としては充分成功しています。
1作目が神がかり的な出来の作品でしたから、同じやり方でこれを超えるのは至難の業だったでしょう。
あえて前作と違うアプローチに出たトビー・フーパーの決断は間違っていなかったと思います。

DVDは最初に発売されたパッケージの物が廉価版として継続販売されつつ、最近「完全版」が新しく発売されました。
完全版はスクイーズ収録されているので、ワイド画面テレビで見やすくなっています。
また完全版の特典映像がすごい!
画質は酷いものですが、本編ではカットされたチェーンソーで若者達を切り刻むシーンなどが拝めます。
メイキングも大変興味深く、L・M・キット・カースン自ら撮影時のエピソードを語ってくれます。
このメイキングを見ることで、イマイチ腑に落ちなかった部分の謎が全て解けてすっきりしました。
製作途中で大幅に予算を削られ、ストレッチとレフティに隠された秘密のシーンが丸ごとカットされたとか、コメディ色が強すぎる事に難色を示したキャノンフィルムが勝手に編集したとか、なるほど、その結果こうなったのかぁ…。と思える事が多々あります。
そんなインタビューから、当初製作陣が目指していた「悪魔のいけにえ」の続編像が見えてくるのが面白い。
この作品をマイナス評価している人も多いようですが、このメイキングを見たらきっと愛着が湧きますよ。多分。

 

ところで、ビル・モーズリィ演じるチョップトップを主役に据えたスピンオフ作品が企画された事があったんです。
こんなイメージ映像も作られていたのですが、残念ながらお蔵入りになってしまった模様。



この動画を見ると刑務所に収容されたチョップトップが何かをやらかすお話のよう。
見たかったなあ。


悪魔のいけにえ3・レザーフェイス逆襲 (原題:LEATHERFACE THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE)

1990年アメリカ映画

 

「悪魔のいけにえ」シリーズの3作目ではあるのですが、シリーズ前2作との関連がいまいち分かりにくい。
なぜなら2作目で殺人鬼一家は破滅しているのに、それを無視するようにレザーフェイスがチェーンソーを振り回し、狂った一家が大暴れします。
一家の名前も前作と同じソーヤーさんだし。
ということは、シリーズ前2作を無視した新シリーズなのかと思えばそうでもない。
2作目からの繋がりは無視しつつも、冒頭のテロップでは1作目の被害者の事が説明されたり。
つまり1作目は尊重するけど、2作目は無視、という立ち位置。
個人的な解釈としては、「悪魔のいけにえ2」を無かったことにして、1作目「悪魔のいけにえ」の新たな続編として作られたのがこの3作目ではないかと。
つまり「悪魔のいけにえ」1作目から続くアナザー・ストーリーという感じでしょうか。
シリーズ生みの親、トビー・フーパー監督が手掛けた正統な続編の「悪魔のいけにえ2」を全否定し、別の続編を作ってしまうという図太さがすごい。
前作「悪魔のいけにえ2」は制作がキャノンフィルムでしたが、3作目ではえげつない映画作りをするニューラインシネマに代わっています。
続編制作の権利を得たニューラインが、金儲けのためにレザーフェイスを蘇らせたかったのでしょうが、やり方が乱暴すぎますね。


また今回の殺人鬼一家は雰囲気が随分と変わっています。
まず家族構成が変更され、前作との共通キャラはレザーフェイスと爺さまくらい。
新たに少女と母親が加わり、レザーフェイスの兄弟もまともな風貌に。
一家の住処は、1作目では鳥の羽や白骨が散乱した民家、2作目では廃墟となった遊園地で、原始的とも思える暮らしぶりでした。
でも3作目では普通の民家。とにかく普通になってファミリーの薄気味悪さ半減。
キャストだってチョップトップを演じるのが男前のヴィゴ・モーテンセンですからね…。
続編を作りたかったのか…、シリーズをリセットしたかったのか…、リメイクしたかったのか…、いくら考えてもよく分からないんですよねぇ。

ちなみに特殊メイクはトム・サビーニの弟子、グレッグ・ニコテロが参加しています。
直接的な描写は控えめですがそれなりにグロいです。
剥いだ皮膚を縫い合わせてマスクを作るシーンは生理的にイヤな感じでした(でも一番グロかったのはメイキングの本物死体画像…。あれは反則。)。
出演者はヴィゴ・モーテンセンばかりが話題になりますが、やはりホラーファンは「ゾンビ」のケン・フォリーの登場に拍手喝采でしょう。
またスタントコーディネーターとしてケイン・ホッダー(13金でジェイソンを繰り返し演じたスタントマン)の名前もありました。

評価としては普通のB級ホラー映画で、「悪魔のいけにえ」はもちろん「悪魔のいけにえ2」にも遠く及びません。
狂気や嫌悪感が圧倒的に足りない。
その分、万人が抵抗無く見れる作品になっており、過剰な期待をしなければ充分楽しめます。
間違ってもトビー・フーパーのようなインパクトを求めては駄目ですよ。



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