アメ車マニア


ハロウィン (原題:HALLOWEEN)

2007年アメリカ映画


 

ジョン・カーペンターの「ハロウィン」といえば、幼い頃に見たホラー映画の1つであり、自分の中では聖域にある作品です。
同じような位置に「悪魔のいけにえ」も存在しているのですが、先にリメイクされた「テキサス・チェーンソー」は最低でした。
オリジナルへのリスペクトもなく、冒涜されているのが耐えられませんでした。
そんな経験もあってこのリメイク版「ハロウィン」は見ないつもりで、劇場にも行かず、DVDもスルーしてたんです。
レザーフェイスに続いてマイケル・マイヤース像までも壊されるのを見たくなかったから。
ところがそんな作品に限って、運悪く手元に転がり込むんですよね。 これが。
意に反して手にしたDVDでしたが、いざ手にすると見たくなるのがホラー映画ファンの心情。
貧乏根性丸出して見始めると、なかなかどうして、オープニングから引き込まれます。

最初はマイケルの少年時代を、オリジナル以上に丁寧に描写していきます。
恵まれない環境の中で人格が破壊されていった少年マイケルの悲劇を見せることでキャラクターに厚みが出ました。
でも普通の少年としての素顔を見せているので、オリジナル版のマイケルにあった得体の知れない怖さがここでスポイルされたのは事実です。
無機質なまでに冷酷なオリジナル版マイケルに対し、多少なりとも感情移入できてしまうリメイク版マイケルの間には大きな隔たりがあります。
ギスギスした人間関係によって精神を破壊され、イジメっ子の友達、母親の恋人、姉とその彼氏を惨殺したマイケルは精神病院へ入院する。
母親の自殺を機に、心を閉ざし、口を聞かないまま15年が過ぎたある日、看守を殺害して病院を脱走。
唯一の家族である妹ローリーの元へと向かう。。。

よくリメイク作品が犯す過ちとして、オリジナルにはない要素を付け足す事で本来の持ち味を殺してしまう事だと思うんです。
その点「ハロウィン」は上手くやってると思います。 新要素も色々あるんですが、全てが程よい。
やり過ぎてないから自分は全く抵抗なく許容できました。

最近のホラー映画の傾向として、ゴア描写にばかり力が入りますよね。
でも内臓ズルズルとか、四肢切断なんていうのはマイケル・マイヤースには不要。
ロブ・ゾンビはその辺もしっかり心得てるみたいで派手な人体損壊は無しで好印象。
でも血糊がどす黒かったりと変なリアルさがあって充分グロいんですけどね。
(ちなみに見たのは劇場公開版。アンレイテッド版はもっとグロいんでしょうね…)

個人的に特に評価しているのが、音楽と俳優の選び方。
音楽はジョン・カーペンター自ら手掛けた例の印象的な曲が使われています。さすがミュージシャンのロブ・ゾンビ。
あの曲は「ハロウィン」を構成する要素の中でも重要なパーツですもんね。
版権の問題とか色々あるんでしょうが、オリジナル版で印象的だった曲が使われなかった「オーメン」のリメイクはがっかりでしたから。

また、脇役の俳優達がホラー映画ファンが泣いて喜ぶ人たちばかり。
そんな俳優を見ているだけでロブ・ゾンビ監督のホラー映画に対する情熱を感じられます。
トラック運転手に「ゾンビ」のケン・フォリー、ローリーの育ての母に「ハウリング」「クジョー」のディー・ウォレス(殺され方は「ハウリング」のエンディング風)、看護婦は「ハウリング2」のシビル・ダニング。
ロン・ハワード監督の実弟であり「デビルスピーク」主演のクリント・ハワード、ロバート・ロドリゲス監督の従兄弟で「フロム・ダスク・ティル・ドーン」でお馴染みのダニー・トレホ、ウォーホールの「悪魔のはらわた」のウド・キアー、「悪魔のいけにえ2」のビル・モーズリー、昔からちょっとアングラなB級映画ばかり出てるシド・ヘイグなど。
こんな役者達の顔を見るだけでも楽しいです。

熱烈な旧作「ハロウィン」のファンからは厳しい意見もあるようですが、個人的な評価は極めて高いです。
実は「ミュージシャンが遊びで作った映画に金なんか払えるか」と、ロブ・ゾンビ作品は避けてたんです。
でもこれ1本でロブ・ゾンビに惚れました♪
不安を見事に裏切ってくれて嬉しかったです。

これ、ホラー映画ファンならとりあえず買っておいた方がいいと思いますよ。
近年で最もホラー映画ファンが楽しめるホラー映画ですので。

   


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