アメ車マニア


ビフォア・ドーン (原題:BEFORE DAWN)

2012年イギリス映画




ゾンビになってしまった奥さんを想い続ける夫の話、というシチュエーションに興味がそそられました。
調べてみると海外での評価は並が多い中で、一部が「感動した」と評価を与えている人がいたので発売と同時にGET。
他に予備知識はなかったのですが、開けてびっくり玉手箱。
製作総指揮を務めているのが「コリン LOVE OF THE DEAD」の監督、マーク・プライス。
以前、「コリン~」のレビューでも書いた通り、マーク・プライスの演出には不完全燃焼な部分がありました。
見始める直前にそんな彼が絡んでいると知り、不安を覚えながら鑑賞スタート。

失業中の夫アレックスとキャリアウーマンの妻メグ。
妻を愛するアレックスに対し、メグは倦怠期…というか、うだつの上がらない夫への愛はすっかり冷めている模様。
アレックスは妻との関係を修復するため、子供達をおばあちゃんに預け、メグを旅行へと連れ出す。
田舎の一軒家を借り、二人きりの時間を過ごす事が目的だった。
目的地へ向かう途中、路上に放置された車など不審な状況を目にするが、決定的な異変には気付かずに宿へと到着。
アレックスが見つけた今夜の宿に、メグもまんざらでもない様子。
仕事の電話で二人の時間を邪魔されたくないアレックスは、妻のスマートフォンを隠してしまう。
ラブラブな夜を期待していたアレックスだったが、二人の関係はギクシャクしたままで寝室からも追い出されてしまう。
凹んだ彼はワインをがぶ飲み。

翌朝、アレックスがスマートフォンを隠した事がバレ、怒ったメグは1人ジョギングへと出掛けてゆく。
美しい田園を走っていると、突如唸り声を上げるゾンビに追われるメグ。
足を噛まれてしまうが、林の中へ逃げ込んでゾンビを振り切ることに成功する。
どうにか自力でアレックスの待つ一軒家へと戻り、助けを呼ぶが電話が繋がらない。
仕方なくアレックスに傷を診てもらっていると突如停電。
「ブレーカーは車庫だ。」とまるで知っているかのように言ったアレックスを不審に思ったメグが彼を問い詰めると、ここは浮気相手と訪れた事がある一軒家だという事が発覚する。
怒りと悲しみをあらわにするメグ。
二人の間には修復不可能な深い溝ができてしまった。

とりあえずアレックスは車庫のブレーカーを見に行く。
しかしそこにはゾンビが潜んでいた!
狭いガレージ内でくんずほぐれつの大乱闘の末、ゾンビの頭部をバールで貫いて倒す。
部屋に戻ってとりあえず酒をがぶ飲み。
そしてメグが休んでいるベッドへ向かうと、そこには変わり果てた姿の妻が!
襲い掛かるゾンビの妻を地下室に閉じ込めたアレックス。

そこへゾンビから逃げてきた一人の男が助けを求めてくる。
男は見てきた街の様子をアレックスに聞かせ、この世の終わりが訪れたと告げた。
アレックスは、その男の話にあった「人間を食った後のゾンビは人を襲わなかった」という情報に目を付けた。
もしかすると、人を食えばゾンビから元の人間に戻るのかもしれない…という仮説を立てたアレックスは、男を襲って気絶させ、地下室の妻に与えた。
しばらくして地下へと降りてゆくアレックス。
そこには食い散らかされた男の体と、その横に座って佇む妻の姿が。。。
凶暴さが消えたように見える妻の側へと近付き、話しかけるアレックス。
しかし、突如凶暴性を取り戻したメグのゾンビが彼に襲い掛かった!

地下室から逃げ出したアレックスは子供達に電話するとようやく繋がった。
しかし電話の向こうではゾンビに襲われる子供達の悲鳴が。。。
落胆するアレックスはソファーに座って目を閉じた。
暫くすると大勢のゾンビたちが玄関のドアを破壊して室内に侵入してきた。
そしてメグも地下室のドアを破ってアレックスに迫ってきた。

しかし、目を開けたアレックスの瞳から人間性は消え失せていた。
既にアレックスはメグに噛まれ、ソンビと化していたのだった。
真っ赤に血走った目でお互いを見つめ合うアレックスとメグ。
ゾンビ夫婦が獲物を求めて雄叫びを上げた。。。

「コリン LOVE OF THE DEAD」よりも遥かにちゃんとした映画でした。
低予算ではありますが、しっかりしたテーマがあるので楽しめました。
特殊メイクは低予算ながらそれなりに頑張っています。
ゾンビは真っ赤な目と、口が裂けた風貌が印象的。
うぉーーー!という絶叫と共にダッシュする「28日後…」「ドーン・オブ・ザ・デッド」系ゾンビです。
人気がない田舎が舞台なのでゾンビの数は多くありませんが、怖さは充分味わえます。
ゾンビ映画お約束のお食事シーンも多くはありませんが、裂けた腹部に手を突っ込むなどなかなかグロいです。
あと、色々なゾンビ映画のパロディも隠されているので、そんな場面を見つけながら見るのも楽しいですね。

テーマがテーマなので夫婦の現状を描く必要があり、序盤はゾンビが出てきません。
ゾンビうじゃうじゃを期待している人は退屈に思うかもしれませんが、これは夫婦愛をテーマにした一風変わったゾンビ映画です。
夫婦の微妙な関係が明らかにされてこそ後半の展開が意味を持ってくるので、固定観念を捨て、前半のドラマ部分で諦めずに見続けてみてください。
ゾンビ映画の新しい可能性を感じられるかもしれませんよっ。
山ほど存在する似たり寄ったりのゾンビ映画に辟易している人にお勧めです。
ただ、あくまでもインディーズに毛が生えたくらいの低予算作品という事をお忘れなく。

ちなみに、失業中、酒浸り、浮気癖ありでちょっと抜けてる情けないアレックスですが、演じているドミニク・ブラントがこの作品の監督。自虐的で笑えますね~。




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