アメ車マニア


ザ・ウーマン 飼育された女 (原題:THE WOMAN)

2011年アメリカ映画


またまたジャック・ケッチャム原作の陰惨ホラー。
今回も例の如く、原作本は読まずに映画についてレビューします。

今回は「メイ」の若手実力派ラッキー・マッキーが監督。
脚本はジャック・ケッチャム本人とラッキー・マッキーが共同執筆。
製作には、ケッチャムの「隣の家の少女」をプロデュース、「襲撃者の夜」を監督したアンドリュー・ヴァン・デン・ハウテン。
自らメガホンを取った「襲撃者の夜」がやや勢い不足でしたから、監督をラッキー・マッキーへ任せたのは正解でしょう。

ストーリーは、アメリカの田舎町で暮らす一家を中心に展開していきます。
家族構成は、威圧的に家族を支配する父親クリスと、その力に抑圧された妻ベル(メイのアンジェラ・ベティス)。
陰のある女子高生ペギー、暴力性を秘めた弟ロジャーは屈折した少年、そして末娘のダーリン。

ある日父クリスが森へ狩りに行くと、獣のように生きた魚に食らい付く、野生の少女を見つける。
彼女は赤ん坊の頃から狼に育てられた狼少女だった。
クリスはその女を捕らえ、自宅の地下室に監禁した。
女は触れようとするクリスの指を噛み千切り、骨をガリガリと噛み砕き、ゴクリと飲み込んだ。
応急手当をしたクリスは家族を地下室へ集める。
そして家族に、女に知性を与える為に全員で世話をすると伝える。
黙って従うベル、嫌悪感を抱くペギー、女に興味を示すロジャー。。。
こうして、一家による女の飼育が始まるが、これが家庭崩壊への第一歩だった。。。

クリスは夜中にベッドをそっと抜け出し、女に手を出した。
息子のロジャーは父親の後をつけ、女と抱き合う姿を覗き見ていた。
そして妻のベルは、寝たふりをしていたがそんな夫の行動に気付いていた。

翌日ロジャーは、家族の目を盗み、女の体をラジオペンチで痛めつけた。
女の絶叫を聞いたペギーが助けに入り、両親に弟の異常な行動を報告。
息子を攻め立てるベルに対し、クリスは思春期の少年が女の体に興味を持つのは自然な事だと息子の暴力行為を咎めようとしない。
そんな異常な夫と息子に嫌気が差したベルは家を出る事を決意するが、クリスの容赦ない暴力により気を失ってしまう。

そこへ、ペギーの担任である女性教師が突然やってくる。
近頃学校で様子がおかしいペギーが、ボーイフレンドとの子供を妊娠しているのではないかと家族に伝えにきたのだった。
しかしそれを聞いたクリスは突如逆上する。
ペギーの子供が自分との近親相姦によってできた子供である事がバレたと思い、教師を張り倒し、息子とともに納屋へと引きずって行く。
凶暴な犬を飼っている檻の中へ教師を放り込み、襲われるのを眺めるクリスとロジャー。
しかし、その檻の一角に設けられた小屋には、狂犬よりも恐ろしい生き物が隠れていた。。。

そしてペギーは父親と弟の暴走を阻止する為に、地下室の女を解放する。
女はまず、騒ぎを聞きつけてやってきたベルの顔に噛み付いた。
夫の言いなりで自分を助けようとしなかったベルを血祭りにあげた女は、続いて息子ロジャーの体を鋭利な木片で真っ二つに。
そして最後は、生きたままクリスの腹部に腕を突っ込み、内臓を引き出し、クリスの目の前で取り出した心臓にかぶり付いた。。。

端折って内容を書いてみましたが、ケッチャムのストーリーがとんでもない物である事がお分かり頂けると思います。
人間の内面描写がとにかくグロテスクなんです。
特にアホ親父クリスとクソガキロジャーの最期には拍手喝采でした。

特殊メイクはロバート・カーツマン。
今回はKNB EFXの名前はありませんでしたので個人でのお仕事でしょうか。
KNBの盟友グレッグ・ニコテロとは一味違う、どす黒い流血シーンを見せてくれます。

ラッキー・マッキーはやはり見せ方が上手い。
作り出す映像にセンスを感じます。
才能が注目された「メイ」でもそうだったように、ポップな映像を作り出しています。
ホラー映画らしからぬおしゃれな映像遊びが所々に盛り込まれています。
先にも書いたとおり、アンドリュー・ヴァン・デン・ハウテンが監督業を譲ったのは英断だったと思いますね。
「隣の家の少女」も嫌いじゃないですが、一連のケッチャム作品の中ではこの「ザ・ウーマン」が一番好きです。

   


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