アメ車マニア


マーターズ (原題:MARTYRS)

2008年フランス映画


フランスの若手ホラー映画監督パスカル・ロジェの作品です。
描写がドギツイと聞いていたので随分時間が経ってからの鑑賞になってしまいました。

途中からネタバレになるので、そこで一度お知らせしますね。

何者かに廃工場に監禁され、暗闇の中で暴行を受け続けた少女リュシー。
犯人の一瞬の隙をついて工場からの脱走を試みる。
他の部屋にも鎖で繋がれた女性が監禁されており、助けを求められたが、追っ手を恐れて置き去りにしてしまう。
無事に保護されたリュシーは、精神的ショックから養護施設へと入所する。
友人もおらず、幻覚に怯え続けるリュシーに優しく接する少女、アンナ。
二人は友情を超えた愛情を育んで育つ。

15年後、大人になったリュシーは、郊外に暮らす家を訪問する。
応対に出た中年男性を射殺、その妻と二人の子供たちにもショットガンを撃ち込んだ。
死んだ娘が水泳大会でメダルを取った際、新聞に掲載された家族写真を見たリュシーは、自分を監禁した夫婦だと確信して復讐に訪れたのだった。
リュシーから復讐をやり遂げた事を電話で聞いたアンナは、事件を隠蔽する為にその家へと向かう。
アンナが到着すると、ごく普通の親子が無残な姿で横たわっていた。
またリュシーは突然現れたおぞましい姿の女に襲われ、体中をかみそりで切り裂かれていた。
傷を治療した後、リュシーを休ませ、遺体を庭の穴へと埋める為に運び出すアンナ。
その時、死んだと思っていた一家の母親が意識を取り戻した。
このいかにも普通の家族がリュシーを監禁、暴行した事が信じられないアンナは、リュシーに気付かれぬよう逃がそうとする。
しかし傷にもがき苦しむ母親の声に気付いたリュシーが母親にとどめを刺した。
自分の言っている事が信じられないのかとアンナに詰め寄るリュシー。
錯乱状態に陥ったリュシーの前に再びあの女が現れ、またリュシーを切り付け始めた。
しかしその女は、子供時代、工場から助けられなかったあの女に対する罪の意識からリュシーが作り出した幻覚で、実際にはリュシー自らが自傷行為に 及んでいたのだった。
そしてそれを止めようとする親友アンナの目の前で、リュシーは自らの首を切り裂き、息絶えてしまうのだった。。。

ここまでが物語の中間あたりになります。
これ以降、予想外の展開が続いていく事になります。
以下、ネタバレがありますので、これから見ようと思っている方は読まないでくださいね。

ではいきます。

惨劇の家でアンナは独りぼっちになってしまった。
その時、家具の中に地下へと降りる隠し階段を見つける。
地下へと降りていくと、リュシーが言っていたような監禁施設が広がっていた。
そこには、体中傷だらけで痩せ細った女性が、異様な拘束具で鎖に繋がれていた。
アンナは鍵で鎖を外し、上の部屋へと連れ出してやる。
しかし長期の監禁状態で精神を病んだ女は、突如暴れ始め、アンナに襲い掛かった。
その時、女の頭を銃弾が撃ち抜いた。
家の中にはマドモアゼルと呼ばれる富豪の老女と、その取り巻きの人間達が入ってくる。
彼らこそ、リュシーを始め、大勢の女性を監禁、暴行した犯人たちだった。
アンナを地下へ連れて行き、彼らの目的を告げる。
人間が肉体的、精神的に追い詰められ、極限の痛みを超えた先にあの世が見えるのだと言う。
それを被害者に体験させ、聞きだす事が彼らの目的だった。
そして新たな実験台として、アンナは地下へ監禁され、最低限の食事だけ与えられ、定期的に殴打を加えられ徐々に追い詰められていった。
そんな時、生前リュシーが言っていた「身を委ねれば楽になれる」という言葉を思い出し、抵抗する事をやめ、全てを受け入れるアンナ。
無残に顔が腫れ上がるまで殴られてもただじっと耐える彼女を見たマドモアゼル一家は、アンナに次のステップへ進む事を伝える。
奇妙な手術台に拘束されたアンナは、顔以外の皮膚を全て剥がされ、全身が筋肉剥き出しの状態にされながらも生き続けていた。
その時、アンナの見せた遠くを見つける恍惚の表情を見た部下達は、急遽マドモアゼルを呼び寄せる。
アンナに何を見たかを尋ねるマドモアゼル。
その耳元で囁くアンナの言葉は、彼らが求めていた答えだった。
そして、死後の世界を知りたい仲間の富豪が大勢呼び集められ、間もなくマドモアゼルがアンナから聞いた言葉を発表すると伝えられた。
しかし、マドモアゼルはバスルームで厚化粧を落とし素顔に戻った後、銃口を咥え引き金を引いた。。。

以上がストーリーです。

アンナがマドモアゼルに語った言葉は明らかにされません。
そのため、マドモアゼルが命を絶った理由もはっきりとは明かされません。
アンナが見た死後の世界が余りにも素晴らしいものだったため、自ら進んであの世へと旅立ったのか。
それとも、何かに絶望して死を選んだのか。
その判断は見た人それぞれが判断すれば良い事だと思います。
ちなみに私は前者だったと解釈しています。

飛び散る血や肉片の量は凄まじく、一家の死に様は目を伏せたくなるほど。
閉じ込められていた女やリュシーの幻覚に現れる女の姿も夢に見そうなおぞましさ。
また自らの体を傷つけるシーンもショッキングです。
そして全身の皮膚を剥がれたアンナの姿は余りにも悲惨すぎます。

でも、そいうったスプラッターシーンだけが見所ではなく、それらを含む暴力描写が見る者の心にダメージを与えます。
彼女たちが感じた痛みや苦痛を思うと胸が苦しくなります。
ホラー映画を見慣れた自分でも、「マーターズ」の数々の暴力描写には胸糞が悪くなりました。
でもトーチャーポルノとは一線を画したテーマを持っており、「ホステル」が嫌いな自分でも「マーターズ」は見れました。

ラストはハッピーエンドではありません。
でも救いが無いかと聞かれれば、悲惨な状況の中で死後の世界を見出した事が微かな救いなのかもしれない。
だからこそ自分としては、マドモアゼルが素敵な死後の世界を求めて自殺したと考えたいのかもしれませんね。

ちなみにタイトルになっているマーターとは、「殉教者」と「証人」という2つの意味があるそうです。
あぁなるほどね。と思わせるパスカル・ロジェ監督、上手いです。。

 


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