アメ車マニア


地獄のデビルトラック (原題:MAXIMUM OVERDRIVE)

1986年アメリカ映画


ベストセラー作家スティーブン・キングの初監督作品です。
キングの短編小説「トラック」を自ら脚本化しています。
映像化が難しいと言われるキング作品ですが、原作者本人がどのように撮ったか興味深い作品です。

地球に彗星が近付いていたある日、世界中で機械や電化製品が自らの意思を持って暴走し、人間を襲い始めた。
トラック運転手が集まるドライブインでコックとして働くビル(エミリオ・エステベス)は、保護観察中という弱みに付け込まれオーナーにこき使われていた。
その店へ給油と食事のために立ち寄った不気味なトレーラーがいた。
それは玩具屋のトラックで、フロント部分に魔人のようなキャラクターの顔が付いている。
ドライバーが食事を摂るためにトラックから離れると、それは突然走り出し、人間に襲い掛かった。
その頃からドライブインには大型トレーラーたちが次々と集まり周囲をグルグルと回り始める。
店の中に閉じ込められた人間達は、ドライブインオーナーが保管していた密売用の銃を手に攻撃を開始。
しかしトラックもドライブインへの電力供給を断ったりと反撃するが、トラックたちの元気が無い。
そのうちにトラックの1台がクラクションでモールス信号を発信し始めた。
ガス欠寸前だからガソリンを入れろ。入れないと店に突っ込む。と脅してきたのだった。
そこでビルたちは仕方なく、スタンドのタンクが空になるまで殺人トラックたちに給油してやる。
元気を取り戻したトラックたちを前に、このままでは埒が明かないとビルたちはドライブインからの脱出計画を実行。
無事逃げ出すことに成功してヨットハーバーへと向かう一行だったが、目的地目前で顔付きトラックが襲い掛かってきた!

周囲を囲まれた建物に篭城するという展開は、キングの盟友ジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を思い出しました。
ただ殴れば倒せる相手じゃなく、巨大な18ホイーラーですから迂闊に手を出せないという所がツライ。
あと彗星の影響で…という点も「ナイト・オブ~」をはじめ、50~60年代のSF作品でよく使われた手ですね。

この映画は世間からの評判が芳しくなく、スティーブン・キングはあっさりと「失敗作」と認めています。
前半部分は後半への期待を高めるに充分なスリルを備えていますが、そんな期待を見事に裏切り、半ば以降は緊張感が途切れペースが乱れ出します。
後半へ行くに従って脚本や演出もどんどん雑になり、最後のトラックとの対決もサクッと軽く終わらせちゃう。
衝撃的なオチも余韻も無かったのがやや残念。

でも個人的には嫌いじゃないんですよね。
いい意味での程好いB級臭、グダグダ感がスティーブン・キングの小説みたいで非常にキングらしいと思うんだけど。
だから個人的には、キング節を理解できない批評家にキングが負けちゃっただけで、初監督作品としては充分いい仕事をしたと思ってます。
それなのに作った本人が「失敗作」と認めるなんて、好き物のファンとしてはショックでしたよ。

という訳で、スティーブン・キングファンは十二分に楽しめる作品です。
いや、むしろキングファンにしか楽しめないキングからのプレゼントと言うべきかもしれませんね♪

 


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