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死霊のはらわた (原題:EVIL DEAD)

アメリカ2013年度作品

サム・ライミ監督の出世作「死霊のはらわた」が2013年にリメイクされました。



製作に名を連ねるのはオリジナル版「死霊のはらわた」の中心メンバーたち。
監督のサム・ライミ、製作のロバート・G・タパート、主演のブルース・キャンベル。
これを見れば、由緒正しいリメイク作品である事が理解できます。
ただ、唯一の不安は、リメイク版の監督に抜擢されたウルグアイの新人、フェデ・アルバレスの実力でした。
何でも5分弱の短編映画を製作、それをYOU TUBEにアップしたところ世界中の映画関係者から熱烈なラブコールを受けたんだそう。
その短編映画がこちら。



うん、確かにすごい。
細かいカメラワークや編集、特殊効果の見せ方も低予算の短編映画の枠を超えたクオリティですね。
とはいえ、商業映画でこの才能が活かされるのかどうか、一抹の不安を抱えたまま劇場へ足を運びました。



オープニングはお約束の蝿の羽音でスタートです♪
「死霊のはらわた」ファンなら大爆笑したいところですが、公開翌週だというのに観客が3人しかいない劇場では笑いを堪えるしかありませんでした。。。

森の中を逃げ回る一人の若い女性。
人影を発見して木の影に身を隠すが、見つかって頭を殴られ気絶させられてしまう。
そして目覚めると暗い地下室の柱に縛り付けられていた。
その周りには恐ろしい拷問道具と思われる刃物や道具が並べられている。
横では「死者の書」を手にした老婆が、彼女を殺すように叫んでいる。
そこに縛り付けられた女性の父親が登場。
助けるのかと思いきや、父親は娘の頭からガソリンをかけ、マッチを手に取り、そして命乞いする娘に火を放つ。
火だるまになった娘の顔は恐ろしい形相に変わり、笑いながら父親に対して叫びます。「お前の魂を引き裂いてやる!」
娘は死霊に取り憑かれていたのだった。。。

ここで場面は変わり、ジープで森の中を走るカップルが登場。
男性の方はデヴィッドで、就職の為に故郷を出て以来、地元とは疎遠になっている。
今回は恋人のナタリーと共に、地元の仲間達と森の小屋で過ごす為にやって来たのだった。
小屋では友人のオリビアとエリック、そしてデヴィッドの妹、ミアが待っていた。
ミアは家を出たまま、母親が病死した際も帰って来なかった兄デヴィッドを許せずにいた。
そして麻薬に溺れ、オーバードーズで死に掛けた事もあった事から、今回はナースであるオリビアと仲間の力を借り、ミアの麻薬を断つのが小屋へ滞在する目的だった。
麻薬からの離脱症状で苦しむミア。
そんな時、嫌な匂いがするというミアの指摘から地下室へと降りていく5人。
そこには吊るされた無数のネコの死骸と、焼け焦げた柱があった。
そしてエリックは、封印するように有刺鉄線で巻かれた四角い包みを発見する。
有刺鉄線を切り、包みを開けると、中からは「死者の書」が出てきた。
中に書かれた呪文をエリックが読み上げると、森に封印された悪魔が甦り、小屋を邪悪な空気が包み込む。。。

ここからは若者が順番に悪霊に取り憑かれてゆき、血みどろのバトルが展開されていくわけです。

オリジナル版は1作目からスラップスティックコメディ要素が強いホラーでした。
初めて見た時、極限まで突き詰めた残酷描写は笑える、という事を思い知らされました。
あのブラックユーモアはサム・ライミならではです。
そして2作目と3作目ではさらにコメディ色が強くなりました。
ところが、今回のリメイク版は笑い無し!
ひたすらシリアスな恐怖の連続で、笑ってる余裕なんて全くありません!
(オリジナルのファンが喜ぶニヤニヤしちゃう要素はありますが)
オリジナル版も怖かったですが、それと張り合えるくらい怖かったです。

オリジナル版のように白い液体が飛んだり、緑色のドロドロした物体は出てきませんが、血や赤黒い液体が大量に垂れ流されます!
元祖スプラッター映画の面目躍如!!
しかも後半では血の雨が降り注ぐという大変不気味な演出まであり、血の量は半端ではありません。

あとこの作品の素晴らしいところは、CGに頼りすぎず特殊メイクに拘っている点。
何でもかんでもCGにしてしまう今のホラー映画には常日頃から疑問を感じています。
CGは決して万能ではありません。
機械のように無機質な物はCGでも違和感がありませんが、人間、特にホラー映画の人体破壊シーンや、血液などの有機的な物の表現はまだまだ満足できる次元ではありません。
お金の掛かった大作ホラー映画でもCGは「あ、CGだ。」とバレますからね。
有機的なものを表現する場合は、やはり特殊メイクやSFXを駆使した方が現実味が増します。
現時点では特殊メイクの方が「そこにある」と思わせる説得力が高いです。
他のホラー映画もこの「死霊のはらわた」を見習って、もっと特殊メイクを使う方向にシフトして欲しいです。

ちなみに、懸念事項だったフェデ・アルバレス監督の仕事ですが、心配は無用でした。
新人監督とは思えない安定した演出を見せてくれます。
監督本人も素晴らしいですが、それを見抜いたサム・ライミも凄いなあ、と感心しきりです。

ただ、一つだけ難を言わせてもらうと、最後に死霊の姿は見せなくても良かったような気がします。
何だか普通の人間みたいで、特別な存在というスケール感が無かったのが残念でした。
例えるならば、Jホラーなんて呼ばれている日本のオカルト系ホラー映画のようでした。
オリジナル版に習って死霊そのものの姿は見せないほうが、得体の知れない怖さがあって良かったですねえ。
でもそれは好みの問題もあると思うし、個人的にそれ以外は目立った突込みどころもありませんでした。
Jホラーのような演出は今のハリウッド製オカルト映画ではよく目にしますが、人気の要素なのかもしれませんね。
こんな突込みを入れながらも、新時代の「死霊のはらわた」は大成功と評価していいと思っています。

「出る」と言ったり「出ない」と言ったりしていたブルース・キャンベルですが、エンドロールの後で一瞬だけ映ります!
もう拍手喝采したいところでしたが、3人しかいない静まり返った劇場なのでガマンガマン。。。

どうやらリメイク版「死霊のはらわた」の続編も製作が決まったとか。
こちらも今から楽しみでなりません!!

オリジナル版「死霊のはらわた」DVD & Blu-ray
 

 


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