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ザ・ウォード 監禁病棟 (原題:THE WARD)

2010年アメリカ映画


2001年の「ゴースト・オブ・マーズ」以来、久々となるジョン・カーペンター監督作品です。
主演はニコラス・ケイジの「ドライブ・アングリー3D」のセクシーダイナマイト、アンバー・ハード。

とある精神病院。
入院患者のタミーは、アリスという名の幽霊に襲われ、そのまま姿を消してしまう。
時を同じくして、放心状態のまま田舎の一軒家に火を放ったクリステンは、その精神病院へと搬送、入院させられてしまう。
その病院には現在も4人の若い女性達が入院していた。
入院早々、クリステンもアリスの亡霊に悩まされるようになり、他の少女たちに尋ねるが皆口を閉ざして話そうとしない。
そんな中、一人、また一人と少女達は姿を消してゆく。。。

後半には一応意外な展開が用意されているので、ネタバレ部分は後ほど書きます。

見終わっての感想は、「ジョン・カーペンターらしからぬ普通の映画だった」という事。
映画の出来は悪くないですが、並の上という感じです。
まあそれはいつもの事であり、そこにジョン・カーペンターならではの遊び心や突飛な発想が加わる事で、彼ならではの世界が構築されていた訳です。
ところが今回はその「らしさ」の部分が感じられませんでした。
ガラスに幽霊の顔が映りこんでいるようなイタズラはありましたが、そんなのは使い古された手法。
カーペンターらしさと言うほどのトリックではありません。
あと「ザ・ウォード」では音楽も別の人間に任せています。
カーペンター映画といえば、監督自ら手掛けた音楽も見所(聴き所)でした。
「ドーーーン、ドーーーン…」といった単調な音楽ですが、あれも重要な「らしさ」。
知らないで見たらこれがジョン・カーペンター監督作品だとは気付かないと思います。

このように全体を引いて眺めてみると、まるで誰かに雇われて撮ったかのような投げやりな印象を受けました。
今まで彼が作ってきた作品を見ればそれも仕方の無いことです。
いつも紙一重の際どいラインを狙ってて、時々大きく外す事もあるけど、全てが噛み合うととんでもなく素晴らしい結果を生む。
「ザ・ウォード」では際どいラインはあえて狙わず、安全な線を狙っちゃった感がどうしても拭えない。
無茶な期待を掛けてごめんなさいね、カーペンター監督。

さて、ここからネタバレいきます。

アリスの亡霊に次々と殺されていく入院患者たちだったが、残った少女達をクリステンが問い質すと衝撃の事実が明らかになる。
暴力的で扱いにくいアリスを、入院している5人の少女たちがリンチで殺してしまったのだと言う。
アリスはその復讐に現れたのだ。
この病院内に居ては全員アリスに殺されてしまうと感じたクリステンは、残った少女達と病院内を逃げ回る。
そのうちに院長の部屋へと辿り着いたクリステンは、アリスのカルテを発見する。
アリスのカルテには、「第6の人格 クリステン」と書かれていた。
何と、クリステンと他の5人の入院患者たちは、実は多重人格障害に苦しむアリスの中に現れた人格だったのだ。
アリスは、田舎の一軒家に住む男に監禁され、長期間に渡って性的な虐待を受け続けた。
その間に受けた耐え難い苦痛から逃げ出す為に自らの人格を封印、新たな人格を作りだした。
アリスは本来の人格を封じ込めていたが、助け出されて治療を受けるうちに徐々に自らを取り戻し始め、手始めにタミーの人格を消し、残りの5人の人格も消し始めた。
クリステンはタミーの代わりに現れた新しい人格だった。
こうして真実を知った偽りの人格達は、姿を現さなくなり、アリスは多重人格を克服したかのように見えた。
しかし。。。

というようにストーリーを書くと、まあよくあるパターンの結末なんですよね。
オチはジョン・キューザックの「アイデンティティー」を思い出しました。
でもつまらなくはないんですよ。
実は主人公のクリステンが実在しない人間だったというオチはかなり衝撃的でしたし。
でもカーペンター監督に対する期待が大きすぎた反動でちょっと低評価になっちゃいました。
偉大な人と言うのは人並みの仕事をしただけじゃ評価はされないんですねえ。
もう一回…、本当にすみません、カーペンター監督。。。

ちなみに特殊メイクはグレッグ・ニコテロとハワード・バーガーのKNBコンビ。
しかし大した見せ場もなく、あえて今をときめくこの二人を起用する必要もなかったような。

 


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