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インフェルノ (原題:INFERNO)

1980年イタリア映画


ダリオ・アルジェント監督の魔女3部作の2作目。「サスペリア」の続編です。
「サスペリア2」は「サスペリア」のヒットに便乗して付けられた邦題であり、「サスペリア」とは全く関係ないお話ですのでご注意を。

「サスペリア」の続編と言っても直接お話が繋がっている訳ではありません。
「インフェルノ」で明かされる事実は、著名な建築家が3人の魔女からの依頼により、ドイツ、アメリカ、イタリアにそれぞれの館を作った。
「サスペリア」のバレエの寄宿学校がドイツの魔女の館、「インフェルノ」の舞台はニューヨークにある魔女の館です。(2007年の「サスペリア・テルザ」でローマの館が出てきました)

ニューヨークのマンションで暮らすローズ。
隣の古物店で見つけた魔女に関する古書「3人の母」を読んでいるうちに、自分が暮らすマンションが魔女「暗闇の母」のために建てられた物だと気付く。
本に書かれたとおり地下を調べると、そこには漏水により水中に沈んだ魔女の部屋があった。
しかしその部屋には皮膚を剥がれた無残な死体が漂っていた。
自分の部屋まで逃げ戻ったローズは、イタリアに居る弟マークに不安を伝え、ニューヨークへと呼び寄せる。
だがマークが到着する前に、ローズは何者かに殺されて行方が分からなくなってしまう。
そしてマークは姉探しと館の謎解きに挑んでいく。

1作目である「サスペリア」は映像、音楽、溢れる邪悪な雰囲気など、全てが完璧で、芸術の域にまで達する神懸り的なホラー映画でした。
それを期待して「インフェルノ」を見ると、何かが噛みあっていないのを感じます。
原色を多用した毒々しい照明が生み出す幻想的な雰囲気、ゴブリンからキース・エマーソンへバトンタッチしたもののプログレサウンドも健在、そしてお決まりのねちっこいショックシーンと、「サスペリア」と共通する部分は多いのに「サスペリア」には遠く及ばず…。

個人的に気になったのは脚本から雑な印象を受けるところ。
これは「サスペリア」と同じ感覚で見た場合の印象で、意図的にアルジェント監督が違う物を撮ろうとしたのであれば、それを見抜けない自分が浅はかという事になるんですが。。。
例えば、ネタを観客側に振っておいてそのまま放置とか、前フリ無しで突然訪れる不条理な展開とか、何度見ても「あれ?あれれれ?!」となる部分があります。
伝説のホットドッグ屋がその最たるもので、足の不自由なおっさんが公園で人食いネズミに襲われていると、その叫び声を聞きつけたホットドッグ屋が包丁を持って走ってきます。
ネズミにかじられているおっさんに走り寄ったかと思うと、おっさんの首に包丁をグサッ!
ええっ!?助けに来たんじゃないの???ってかアンタ、今初登場だよね?誰?何で刺したの?ってな具合です。
他にも地下のプールに沈んだ魔女の部屋や、そこで見つかった死体も追求される事なく放置。
また犯人が集めた3冊の古書の意味も明かされず不完全燃焼。
そしてマンションのとある住民が魔女だったのですが、その正体が凄まじい!
何と全身骸骨に黒マントという、今時子供でも書かないような見事な死神像!
こうやって見ていくと、思わせぶりな映像を繋ぎ合わせたイマジネーションを刺激する映画という感じがします。
だから辻褄の合ったストーリー展開は二の次なのかな…と。

アルジェント監督がアメリカ資本で撮った最初の作品がこの「インフェルノ」であり、ハリウッドのメジャースタジオならではの制約も多かったという事は想像ができます。
色々大変だったんだろうなあ、なんて思いながら見ると「インフェルノ」もなかなか味わい深いです。

ちなみに特殊効果を担当したのは、往年のイタリアホラー映画界の大物監督、マリオ・バーヴァ。
「デモンズ」の監督、ランベルト・バーヴァのパパさんですね。
この「インフェルノ」が製作された1980年に他界されているので、これが最後の仕事だったようです。

   


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