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サスペリア (原題:SUSPIRIA)

1977年イタリア映画


イタリアの鬼才ダリオ・アルジェントの傑作オカルト映画…というのは世間一般的な評し方で、イタリア映画ファン的には「傑作ジャーロ」と言うべきですね。
後の「インフェルノ」「サスペリア・テルザ」へと繋がる魔女三部作の記念すべき一作目になります。
日本で公開された「サスペリアPART2」はこの作品の続編ではありません。
「サスペリア」の前年に制作され日本未公開のままだった「PROFONDOROSSO」という作品を、「サスペリア」のヒットにあやかって続編のごとき邦題を冠して公開したという裏があります。
だから「サスペリア」の続編を見たい人は、「インフェルノ」を見ましょうね。

名門バレエ学校に入学するためドイツにやってきたアメリカ人の少女スージー。
空港からタクシーで学校を訪れると、雷雨の中、一人の少女が何かを叫びながら飛び出し、林の中へ消えていった。
翌日、ロープで吊られた少女の刺殺体と、巻き添えになった女性の遺体が発見される。
スージーは校舎内の寮に住むはずだったが、仲良くなった女子生徒の部屋に転がり込み、同居を始めた。
バレエのレッスンが始まるが、学校内で働く中年女性が持つクリスタルから発せられた怪しい光を浴びたスージーは、体調を崩して倒れてしまう。
寮のベッドで意識を取り戻すと、友人の部屋にあったはずの荷物が全て運び込まれ、教師たちから寮で暮らすよう強制される。
こうしてバレエ学校での生活が始まったが、学校の周辺では異常な事件が相次ぐ。
屋根裏で発生したうじ虫の大群が天井から女生徒たちの頭部に降り注ぎ、学校をクビになった盲目のピアニストが自分の盲導犬に噛み殺された。
そんな不審な事件が相次ぐ中、スージーは殺された少女の親友だったサラと仲良くなる
少女から聞いた学校の秘密を打ち明けようとしたサラだったが、スージーが睡眠薬で眠らされた隙に何者かに殺されてしまう。
翌朝、姿を消したサラを不審に思ったスージーは、サラが相談していた精神科医フランクを訪ねる。
彼からバレエ学校を設立したのが魔女エレナ・マルコスであり、その死後オカルト崇拝は影を潜めて現代に至っている事を知らされた。
学校へ戻ったスージーは、学校の秘密を暴くべく、校長室へと忍び込む。。。

まずのっけから執拗にナイフでブスブスと刺された後、首にケーブルを巻かれて天井のステンドグラスを突き破って落下する少女の殺害シーンが強烈です。
その巻き添えになる友人の女性も割れたステンドグラスに顔面を真っ二つにされて絶命します。
盲目のピアニストが盲導犬に噛み殺されるシーンはゴア描写こそ弱めですが、その酷さと背徳感は並じゃありません。
学校内で追い詰められるサラもサディスティックに虐められ、積み上げられた針金の山に体の自由を奪われた挙句にカミソリで喉を掻き切られてしまいます。
この肌を切り裂くカミソリの描写が妙に生々しくて嫌なんですよね。

映像はアルジェントのセンス炸裂です!
奇抜なカメラワークは控え目ですが、何気なく差し込まれる映像が不安を煽り、非常に効果的。
語り草となっている原色を大胆に取り入れた照明効果も強烈な印象を残します。

音楽はお約束のゴブリンに加えてアルジェント自身も参加。
前年に製作された「サスペリアPART2」(ややこしい…)とは打って変ってそのサウンドが前面に出まくり!
楽器を掻き鳴らしたノイズのようなサウンドが不安と嫌悪感をこれ以上ないくらいに掻き立てます!
不快さと美しい旋律を掻き雑ぜたような音楽は映画史に残る傑作と言って良いと思います。

「サスペリア」は、極限の恐ろしさ、残酷さ、美しさが合わさった結果生まれた、高い娯楽性を備えた芸術的作品です。
イタリアンホラーという括りの中だけでは評価しきれない傑作だと思います。必見です!


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