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「飛びだす悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲」(原題:TEXAS CHAINSAW 3D)

アメリカ映画2013年度作品


またもや新しい「悪魔のいけにえ」が登場です。
マイケル・ベイによるリメイクシリーズの続編ではなく、何とオリジナル1作目のエンディングから始まります。
しかし、トビー・フーパー監督による歴とした続編「悪魔のいけにえ2」への繋がりを全く考慮しない新しい続編。
「悪魔のいけにえ」の続編はただでさえパラレルワールド(?)がいくつも存在していてややこしいのに、さらに混乱させられそうです。

なので、まずはこのシリーズを振り返る所から始めてみようと思います。

「悪魔のいけにえ」
オリジナルシリーズ1作目。神懸り的とさえ思えるホラー映画の傑作。

「悪魔のいけにえ2」
1作目と同じトビー・フーパー監督が手掛けた正当な続編。
とはいえ、真っ当な手段で前作を超えられないと判断してスプラッターコメディ化。

「悪魔のいけにえ3・レザーフェイス逆襲」
版権を得た制作会社が無理矢理作った3作目。
2作目で全滅した殺人鬼一家がビジュアルを一新して再登場。
前作のラストを完全に無視したパラレルワールドが舞台と思われます。
あるいは名前は異なっていますが苗字は同じくソーヤー家なので、前作の一家の親戚!?

「悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス」
レザーフェイスや狂人一家は出てくるがファミリーの苗字が異なる。
これもパラレルワールドが舞台か、または似た異なる狂人ファミリーのお話って事でしょううか。

「テキサス・チェーンソー」
1作目のリメイクだが殺人鬼一家の名前や家族構成が異なる。

「テキサス・チェーンソー・ビギニング」
リメイク「テキサス・チェーンソー」の続編。
前作の前日譚となっている。

「飛びだす悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲」:
これが今作。オリジナルシリーズの殺人鬼ファミリーの名前が復活。
しかし、オリジナル2作目の存在を無視した新しいお話が展開。

ストーリーは…、

1作目のラスト、チェーンソーを振り回すレザーフェイスから逃げ切ったサリーは町へと帰る。
殺人鬼ファミリー、ソーヤー家の存在を聞いた町の住人たちは怒りに燃え、その住居を襲撃。
町人から銃撃されるが、どこからともなく現れたソーヤー家のおやじ2名(NEWキャラ)もショットガンで反撃する。
しかし火炎瓶の投擲にあえなく住居は全焼し、ソーヤーさんちの男達も全員黒こげ。
猛火から唯一逃げ出せたソーヤー家の娘(NEWキャラ)とその赤ん坊(NEWキャラ)が居た。
しかし娘は殺され、赤ん坊だけが子供の居ない夫婦に引き取られていった。

赤ん坊はヘザーと名付けられ、生い立ちを知らされないまま美しい女性へと成長していた。
ある日ヘザーの元へ、祖母が亡くなったという知らせと遺産相続の通知が届く。
そこで初めて自分がソーヤーという家の娘であった事を知る。

友人達と共にテキサスの指定場所へと向かうとそこには豪邸が待ち構えていた。
豪華な家に浮かれている若者達だったが、地下室の奥にはレザーフェイスが潜んでいた。
町民の襲撃から逃れ、母親の家に匿われていたのだった。
そして、若者達は一人、また一人とレザーフェイスの餌食になっていく。

唯一生き残ったヘザーは警察に保護されるものの、そこでソーヤー家の秘密と、彼らが町民に殺された事実が記された資料を目にしてしまう。
自分が殺人鬼一家の生き残りである事を知り、身の危険を感じたヘザーは警察署から逃げ出す。
ところが過去に一家殺害を先導し、現在は町長を務めているハートマンとその息子に拉致、精肉工場に拘束されてしまう。
そしてレザーフェイスが現れヘザーに襲い掛かるが、間一髪のところで彼女が唯一の身内だという事に気付く。

そこへハートマンの一行が登場して、レザーフェイスを殺そうと追い詰める。
そんな劣勢のレザーフェイスを助けたのはヘザーだった。

チェーンソーでハートマンを切り刻んだレザーフェイスは、ヘザーと共に豪邸へと戻る。
ヘザーは祖母からの遺言を読むと、遺産と共にレザーフェイスの世話という仕事も受け継いだ事を知った。
そしてその家で、唯一の家族であるレザーフェイスと共に暮らしていく決意をするのだった。。。

…ってな感じです。

ご覧の通り、「悪魔のいけにえ2」で大活躍したチョップトップも出てきませんし、哀愁を振りまいていたドレイトン・ソーヤーも冒頭で早々に殺されています。
「悪魔のいけにえ2」への繋がりを完全に絶ったオープニング以降、かなり意気消沈して鑑賞する羽目になりました。
この作品といい、オリジナルシリーズ3作目、4作目といい、何でみんなレザーフェイスの生みの親、トビー・フーパーが手掛けた「悪魔のいけにえ2」を無視するんでしょう!?
公開当時、1作目のシリアスで狂気に満ちた作風を期待していたファンからは辛辣な評価を受けましたが、アプローチこそ違えど十分狂気的な作品だと思います。
「悪魔のいけにえ」信者としては異端と言われるかもしれませんが、自分は「悪魔のいけにえ2」も好きだし、評価もしています。
なので「2作目は無かった事にして…」という流れでシリーズが展開している事に憤りを感じますねえ。
おまけに、正当な続編を無視して別のストーリーを展開した挙句、その「悪魔のいけにえ2」を超えられていない駄作揃いってのがまた腹立たしい。
トビー・フーパーをなめんなよ!…と言いたい。

この「飛びだす悪魔のいけにえ」の監督は、ポール・ウォーカー等のスターが競演した「テイカーズ」を撮ったジョン・ラッセンホップ。
監督の上手い下手以前に、ストーリーに詰めの甘さを感じます。
脚本と原案は「ジェイソンの命日」で監督等を務めたアダム・マーカス等、複数による共作。
「ジェイソンの命日」も滅茶苦茶で酷い脚本でしたから納得と言えば納得なんですが。

また、トビー・フーパーの1作目には居なかったNEWキャラクターが、何の説明も無く唐突に登場します。
さり気なく、何事も無かったかのように配置していますが、見ているこっちは「これ誰!?」と激しい違和感です。
作り手側の都合で設定を変え過ぎなのもまた苛立たせてくれます。

ちなみに町民の襲撃シーンで突然ショットガン持参で加勢するおっさんは、「悪魔のいけにえ」1作目でレザーフェイスを演じていたガンナー・ハンセンですね。
ホラー映画界のスターを登場させるために無理矢理設けたNEWキャラクターという事なんでしょうか?
またエンディングでチラッと登場するおばあちゃんは、1作目で生き残ったサリーを演じていたマリリン・バーンズ。
この1本で若い頃の彼女と現在の彼女を見れると言う、マリリン・バーンズファンには堪らない作品となっておりますですよ、はい。
ゲスト出演で驚きだったのは、「悪魔のいけにえ2」でチョップトップを演じたビル・モーズリーが、ドレイトン・ソーヤーを違和感無く演じている事!
元祖ドレイトンのジム・シードウの演技を側で見ていたからでしょうか、もうドレイトン・ソーヤーにしか見えませんでした!

特殊メイクは、「悪魔のいけにえ2」の特殊メイクを担当したトム・サビーニの弟子、グレッグ・ニコテロ率いるKNBエフェクツが担当。
特殊メイクの部分はいい感じにグロいんですが、いただけないのはCGを使ったゴアシーン。不自然です。
人体や血液といった有機的なモノをCGで描くのは、現代の技術では限界があると思います。
この作品ではその限界を見事に感じることが出来てしまいました。
チープなCGよりも、昔ながらの特殊技術を上手く使った方がリアルに出来ると思うんですよねえ。

あと、レザーフェイスのマスクのデザインがあまりよろしくない。
人の皮を被っているというおどろおどろしさが希薄でした。

それと舞台ですが、風景がテキサスっぽく見えないのは気のせい?
鬱蒼と葉が茂る森ばかりでテキサスという言葉からイメージする荒野は出てきませんでした。
いや、自分もテキサスは言ったことがないので適当な事は書けませんが、少なくとも初代「悪魔のいけにえ」の乾いた雰囲気はありませんでした。

3作目、4作目よりはマシですが、フツーの低予算B級映画並みのクオリティです。
1作目、2作目が持っていた狂気は感じられず、リメイクシリーズのような娯楽アクション要素もありません。
見所はこのシリーズに関わってきた俳優達が楽しそうに演じている所でしょうか。
「悪魔のいけにえ」ファンならとりあえず見ておいてもいいかもしれませんね。

 


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