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サスペリアPART2 (原題:PROFONDO ROSSO)

1975年イタリア映画





ダリオ・アルジェント監督のファンが口を揃えて最高傑作と評価するのがこの「サスペリアPART2」。
最初に知らなければならないのが1977年制作の「サスペリア」との関係。
あたかもその続編のような邦題が冠せられていますが、実は「サスペリア」とは全く無関係。
「サスペリア」のヒットで味を占めた日本の配給会社が、その前年にアルジェントが製作し、日本では未公開のままだった「Profondo rosso」という作品に勝手に付けた邦題が「サスペリアPART2」。
「サスペリア」のヒットに便乗した酷い邦題です。
しかも1作目よりも前に作られた2作目ってどういうこっちゃ。

そんな適当な配給会社の仕事っぷりはさておき、世間の評判通りアルジェントの映像センスが炸裂しまくっている「サスペリアPART2」。
広角で人物の表情が見えないほど引いて見せたかと思えば、置いたアイテムを接写してみたり。
カメラを生き物のように自由に動き回らせたりと、その撮り方を見ているだけでも楽しい。
これを見るとダリオ・アルジェントが天才という事がよく分かります。最近はちょっと元気がありませんが。
ちなみにヒロインを演じるのはアルジェントの奥さん、ダリア・ニコロディ。
彼女はこの作品が一番キュートですね~。

音楽は以降のアルジェント作品で欠かせない存在となるゴブリンが担当しています。
彼らの音楽はその後存在感を増していき、映画を置き去りにして一人歩きしている作品も見られるようになります。
この「サスペリアPART2」もゴブリンらしい格好いい存在感ある音楽を聞かせてくれますが、前に出過ぎず、ばっちり映画を盛り上げています。
個人的には映画音楽としてはこれくらい控え目(?)な方がまとまりがあって好ましく感じますね。
ま、大袈裟すぎるゴブリン節も好きなんですけどね~。

ストーリーは、殺人事件現場に居合わせた事で嫌疑をかけられたピアニストが真犯人を探すサスペンス。
そう、「サスペリア」のようなオカルト映画ではないんです。
殺された霊能者、幽霊屋敷について書かれた本、本の著者の殺害、霊能者を研究していた教授の殺害、幽霊屋敷へ潜入、隠された秘密の発見、幽霊屋敷炎上、真 相が隠された小学校へ侵入、犯人登場、謎解き、真犯人登場、…The end。ってな流れです。こんなざっくりした説明でも面白いですよね。
また不気味な絵画、壁画、人形、鏡、レザーの手袋などなど、色々な小道具が効果的に使われてるのも印象的です。
中でもとりわけ不気味なアイテムがゼンマイ仕掛けの人形。
犯人はあんな物をどこから持ってきたのか知りませんが、迫って来る姿は夢に見そうです。

サスペンスとはいえ、サディスティックでねちっこい殺しの場面はばっちり描かれています。
割れたガラスに首を突き刺す、熱湯に顔面を浸ける、暖炉や机に歯を打ち付ける、ナイフを肌に突き立てる、車に引き摺られた上に顔面轢死、首に食い込む鎖。。。
特殊効果のスタッフにはアカデミー賞受賞者カルロ・ランバルディの名前もあります。
ホラーとしては残酷描写は弱めですが、サスペンス映画としてはきつめ。さすがジャーロです。

この映画、昔テレビで見た時の方がインパクトがありました。
なぜかと言いますと、画質が向上したDVDで見ると、映像の中に仕込まれた落ちの部分が、冒頭の時点で鮮明に見えてしまうんです。
そこに隠れキャラが仕込まれていると知っていたとはいえ、あまりに見えすぎちゃってて興醒めです。
作品に罪は無いんですが、技術の進歩というのはこんなマイナス面を生じさせちゃうんですねえ。
(ソフトの画質が悪けりゃ文句を言うくせに、画質が良くても文句を言う。ソフトメーカーさんごめんなさい。)

そんな難癖を付けてはみましたが、この作品は間違いなく名作です。
繰り返し見直す度に伏線が繋がり、新たな発見がある。
近年のダリオ・アルジェント作品を見てがっかりした人も、「サスペリアPART2」を見れば彼を見直すはず。
未見の方は是非っ!

  


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