アメ車マニア


マニアック (原題:MANIAC)

アメリカ1981年度作品


)

これもトム・サビーニが特殊メイクで参加のシリアルキラーもの。
こちらは特殊メイクのみならず俳優としても出演。
しかも殺人鬼に頭を吹っ飛ばされるカップルの男を熱演してます。
映画の中で自分を殺すという偉業を成し遂げるなんてさすが、勢いのある売れっ子特殊効果マンです。

この作品に出てくる殺人鬼は中年のマザコン変質者。
殺した女性の頭皮を剥ぎ、着ていた洋服と共に持ち帰ってマネキンに被せてコレクションしています。
女性の額に刃物で切れ目を入れ、ズルズルっと頭皮を剥がすシーンは強烈です。

この殺人鬼、男にだらしない母親の姿と、母親から受けた虐待がトラウマになっています。
それが原因となり、女性を罰したい衝動と、愛情を独占(コレクション)したいという願望から凶行に走ります。

トム・サビーニ先生のテクニックもあって凶行の場面もかなりヤバイですが、最後のオチというかエンディングがこれまたヤバイ。
この時期に量産されたスラッシャーものの中でもかなり病んでます。

殺人鬼を演じつつ原案と脚本まで担当したのは、「ゴッドファーザー」「ロッキー」「タクシードライバー」などにも出演したジョー・スピネル。
終始「ウーン…ウーン…」と唸ったり、貧乏ゆすりのように体を揺らしたり、汗まみれで女性に飛び掛る姿がかなり気持ち悪い。
今改めて見直すとジョー・スピネルってすごい俳優です。
トム・サビーニの特殊メイクに、ヤバイ脚本、ジョー・スピネルの演技と見た目の組み合わせで不快指数120%です…。

難点は犯人視点で物語が進むので、いまいち感情移入しにくいところ。
女優さんは単に殺され役でしかなく、殺されるのか?助かるのか?というハラハラ感も希薄です。
かといって殺人鬼の内面が丁寧に描かれているかというとそうでもなく、自身なさげなマザコン親父が突如饒舌なプレイボーイに変身して、出会ってすぐの元ボンドガール、キャラライン・マンローをデートに連れ出したりとか、キャラ設定が結構ええ加減。
キモイ殺人鬼像を作り上げようぜ!というジョー・スピネルの野心は感じますが、ちょっと中途半端だったかもしれませんね。

監督は後に「マニアックコップ」を撮るウィリアム・ラスティグ。
何と今は高品質ソフトを連発しているアンカーベイ社で映画ソフトの制作に携わっているとか。
ホラー映画ファンは知らず知らずのうちに今でもウィリアム・ラスティグにお世話になっていたんですね。

ちなみに、映画「フラッシュダンス」の挿入歌として大ヒットしたマイケル・センベロの「マニアック」。
何を隠そうあの曲、当初はこの「マニアック」のために書かれた曲だったんです。
ところが、歌詞を書き換えられて「フラッシュダンス」に持って行かれちゃったんですね。
マイケル・センベロにしてみればラッキーでしたね。

さて、本作で強烈な印象を残したジョー・スピネル、「マニアック」の続編撮影中だった1989年、日頃の不摂生が祟って亡くなってしまいました。
続編は未完のままになってしまいましたが、またフランクの活躍が見てみたかったなあ。

  


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