アメ車マニア


マニアック (原題:MANIAC)

アメリカ・フランス合作2012年度作品


「13日の金曜日」のヒットに端を発する1980年代のスラッシャーホラーブームの中でも、猟奇度合いが一際高かった「マニアック」のリメイク作品です。
1980年のオリジナル「マニアック」は、ジョー・スピネルが狂気の殺人鬼フランク・ジトーを熱演し、それを血みどろ特殊メイクの巨匠、トム・サビーニが援護した事で、数ある殺人鬼モノでも傑出した作品でした。
映画としてはかなり荒削ではあるんですが、ジョー・スピネルと残酷描写、その強烈なビジュアルが脳裏に焼き付いて離れません。

そのリメイクとなる今作は、「ハイテンション」「ヒルズ・ハブ・アイズ」の監督であるアレクサンドル・アジャが製作に回り、同じくアジャ製作の「P2」でも監督を務めたフランク・カルフンが監督。
さらに嬉しいことに、オリジナル版の監督ウィリアム・ラスティグも製作として名を連ねています。

このリメイク版ではオリジナルには無い大きな変更が加えられています。
なんと、犯人のPOV(一人称視点)映像、つまり、犯人の視点で物語が描かれていくのです。
通常、殺人鬼モノといえば、逃げ惑う被害者に感情移入して犯人がどこから飛び出すかハラハラしながら楽しみますが、この作品では獲物を眺めながら「フフフ、俺様はここだぜ。」と、殺人鬼の気分を味わわされます。
これはなかなか斬新な試み。そして結構イヤな気分です。
ただ、オリジナル版も殺人鬼を中心に物語が進んだので、そういった意味では正常進化かもしれませんね。

特殊メイクを担当したのはトム・サビーニの弟子であり、TVドラマ「ウォーキング・デッド」等でも大活躍中のグレッグ・ニコテロ率いるKNBエフェクツが担当。
師匠に負けず劣らずのドギツイ残酷描写を見せてくれます。

そして驚きは、元美少年子役スターで、「ロード・オブ・ザ・リング」で主演を張ったイライジャ・ウッドが殺人鬼を演じていること。
演技派なのは百も承知ですが、あの無垢な少年が変質者フランク・ジトーを演じられるのか!?と疑問を感じながらの鑑賞でした。

夜のLA。女性を付け回し、殺しては頭皮を剥ぎ取るという異常者フランク。
剥ぎ取った頭皮はマネキンに被せてコレクションしていた。
彼は幼い頃、男を連れ込んでは乱交に耽る母親を盗み見ているうちに、母からの愛情への渇望と、女性への歪んだ感情を覚えるようになる。
大人になったフランクは親が営んでいたマネキンの修復業を引き継ぎ、それを生業としていた。
母親も他界し、子供時代のトラウマからか生身の女性に興味を示すと頭痛を引き起こすため、天涯孤独に暮らしている。
フランクが一緒に暮らすのは、頭部から血を滴らせるマネキンたちだけだった。
ある日フランクの店へ、マネキンを専門に撮影する写真家、アンナがやって来る。
フランクのアンティークマネキンを撮影させて欲しいという申し出をきっかけに、急接近する二人。
アンナに恋心を寄せ、頭痛に苦しみながらもデートを重ねるフランク。
しかし、アンナの作品展で彼女の知人女性に罵られたフランクは、母親の面影が重なり、その女性を惨殺。
そこから運命の歯車が狂っていく。。。

イライジャ・ウッド、出番少ないです(汗)
POVだから当然っちゃ当然ですが、せっかくのスターを起用しながらこれはちょっと勿体無い。
彼の顔が拝めるのは、鏡に顔が映った時と、フランクの妄想映像の中のみなので、彼のファンは物足りないでしょうね。
でも、出番は少ないながらも、持ち前の演技力で狂気の殺人鬼を熱演していました。
ただ普通にしているだけで変質者臭がプンプン漂うジョー・スピネルとは違いますが、見た目が普通っぽいだけに内に秘めた狂気が恐ろしい。
また、彼が払拭する事ができない「少年」のイメージが、大人になりきれないマザコン変質者フランク・ジトーにオーバーラップするのがまた怖い。
彼の起用は大成功だったんじゃないでしょうか。

また、1980年のオリジナル版では殺した後に頭皮を剥いでいましたが、リメイク版では生きてる女性からも剥ぎ取ってます(X_X)
かわいい顔してるのに、リメイク版フランクの鬼畜っぷりはかなりの物です。

ちなみに、劇場公開版は(レンタルDVDも)ゴアシーンになると残像が出るような画像処理が施され、映像がよく見えないようになっています。
モザイクやボカシのような露骨な処理ではないものの、見たい所が隠されていると言う不完全燃焼仕様。
年齢制限をR15に下げるために残酷描写を隠したのでしょうが、これは要らん処理だと思います。
この映画のターゲットを考えれば残酷描写そのままでR18で良かったでしょう。
15歳~18歳の僅かな少年少女を拾うために見せ場を隠し、本当にこの作品を見たかった層を蔑ろにしています。
映像が処理されていると聞いて劇場から遠退いた大人のホラーファンも多かったんじゃないでしょうか。
ここはしっかり配給会社さんに考え直してもらいたい所ですね。

セルDVD&Blu-rayはノーカットのアンレイテッドバージョンなので、買えばグロシーンもばっちり見れます。
残酷描写が見せ場ですから、見るなら購入される事をお勧めします。

しかしこんな作品に出た後に、ファミリーカーのCMでイライジャ・ウッドを起用したトヨタはいい度胸してますね。

   


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