アメ車マニア


ロスト・アイズ (原題:LOS OJOS DE JULIA)

2010年スペイン映画





ヒットメーカー、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮のホラー映画。

何者かに追い詰められた盲目の女性サラが首に縄をかける。
その時、部屋の片隅でその様子を眺めている何かの存在に気付く。
激しく言葉で責めるサラが立つ台を、その何者かが蹴飛ばし、彼女の体は宙吊りになった。

サラの双子の妹フリアは、姉の身に何かが起きた事を感じ、夫のイサクと共に姉の家を訪ねる。
予感は的中し、地下室で首を吊った姉の遺体を発見するが、姉が自殺した事に不審感を覚えたフリアは独自に姉の周囲を調査し始める。
しかしフリアにも、姉と同じ進行性の病気による失明の時が迫っていた。
視力が失われ行く中、調査を行うフリアの前に不審な人影が現れるようになる。

自殺だという周囲の見解をよそに、見えない犯人探しに没頭する妻を心配するイサク。
リフレッシュするために旅行へ行こうと提案するイサクに、フリアはあるホテルへの宿泊を希望する。
そこは姉が死の直前に宿泊したホテルだという事はイサクに告げなかった。
そのホテルでは姉が目に包帯を巻いた状態で、男と一緒にいる姿が目撃されていた。
姉は視力を取り戻そうと角膜移植手術に臨んでいたのだった。
そんな姉が数日後に自殺するのはやっぱりおかしい!とイサクに訴えるフリア。
しかしイサクは自分を騙して姉の調査を継続していた妻に憤慨したまま失踪してしまう。

イサクはサラの家の地下で首を吊った状態で発見された。
夫の死に加え、その夫と自分の姉サラが不倫していた事も発覚。
そのストレスからついにフリアは視力を失ってしまう。

落ち込むフリアだったが、角膜移植のドナーが見つかり、手術する事になった。
移植した角膜が安定するまで包帯が取れないフリアの元へ、看護師イヴァンがやってくる。
不審者から何度も助けてくれた顔を見たことがないイヴァンに恋心を抱くフリア。
イヴァンの自宅を訪れたとき、ある事をきっかけに彼が不審な影の正体だと知る。
身の危険を感じたフリアは、あと4日間は取ってはいけないと言われた包帯を取ってしまう。
視力が戻った目に飛び込んで来たイヴァンの部屋の壁には、盗撮したサラとフリアの写真が隙間無く貼られていた。
イヴァンの元から逃げ出したフリアだったが、その視力は徐々に衰え始めていた…

前半は姉の死を追及する謎解きサスペンス。
色々と凝った仕掛けが施されているので退屈させません。
まずオープニングでサラが暗闇に潜む何かの気配に怯えるシーン。
見えない恐怖をまざまざ見せ付けてくれます。
そしてサラの死を追求するフリア。
視力が衰えた彼女の視界は靄が掛かったように見えます。
この「はっきり見えない」事を利用した不審者との追いかけっこはなかなかスリリングでした。
また視覚障害者のコミュニティに潜入、相手が全盲なのを良い事に、姉の噂を盗み聞きする場面もドキドキ。

後半は手術により一時的に視力を失ったフリアが体験する恐怖。
怪しい登場人物が多いので気が抜けません。
中でも、余りにも顔を映さないイヴァンが怪しいなあと思ってたらそこは案の定でした。
ただこのイヴァンにも色々と秘密がありまして…そこは本編を見て確認してください。

見えない恐怖というのは過去のサスペンス映画でも度々描かれてきました。
使い古されたテーマではありますが、この「ロスト・アイズ」でもそれを効果的に使っています。
視力を失い、独りぼっちで過ごす自宅で、侵入者の気配を感じた状況を想像してみてください…。
最悪ですよね。そんな映画です。

ただ、次から次へと急転を繰り返すストーリー展開は強引で、やや盛り過ぎだった感もあります。
観客の目を真犯人から逸らす為の仕込みだったのでしょうが、明らかに蛇足な伏線が幾つかあったのも気になりました。

でもラスト、予想外の感動に多少の気になるところも帳消しです。
包帯を取るのが早かったために再度視力を失う事が確定したフリアは、最後に夫イサクの遺体と対面する事を望む。
その瞳には角膜が無く、イサクの強い希望でフリアに移植された事が判明します。
生前、イサクがフリアに語っていた「君の瞳の中に宇宙を見た」という言葉がここで意味を持ちます。
フリアに移植された角膜の奥に、宇宙のように果てしなく広がる愛を映し出して映画は幕を閉じます。
壮大で感動的なエンディングは予想外でしたがとても印象的でした。
この幻想的な幕引きは製作総指揮のギレルモ・デル・トロの趣味では?と勘繰ってしまいますね。

フリアを演じたベレン・ルエダという女優さんは、同じくギレルモ・デル・トロ製作総指揮の「永遠のこどもたち」でも主演していました。
ピチピチギャルではないけど、大人の色気ムンムンの美人女優ですね。

 


<メイ> <リストへ戻る> <スマイリー>