アメ車マニア


リンク (原題:LINK)

1986年イギリス映画




ヒッチコックの熱狂的ファンであり、その下で映画製作に参加した事もある技巧派リチャード・フランクリン監督作品。
出身地であるオーストラリアで製作した「パトリック」でその手腕が認められ、1983年に「サイコ2」の監督に抜擢された。
その3年後にイギリスで撮ったのがこの「リンク」です。

25年ほど前にレンタルビデオで見て大好きになった作品ですが、ついに2013年、DVDで再度拝める日がやって来ました!

猿の高い知能に目をつけ、その研究を行っている教授(テレンス・スタンプ)の家に住み込みのアルバイトにやってきた女子大生ジェーン(エリザベス・シュー)。
人里離れた豪邸で目にしたのは、人間とコミュニケーションを図る知能を備えた老オランウータンのリンクと、チンパンジーのブードゥ、インプだった。
しかし教授は、暴力的で手に負えなくなったブードゥと、研究対象としては年老いてしまったリンクを動物買取業者に引き取るよう電話で依頼していた。
翌日、業者へ引き渡す為、研究室でブードゥを檻に入れようとしていた教授だったが、その背後からリンクが襲い掛かった。。。

何も言わずに姿を消した教授を不審に思ったジェーンだったが、教授の車とブードゥも消えていた事から、町の業者の所へ行ったのだと判断する。
しかしリンク、インプと共に教授の帰りを待っていたジェーンの元に、動物買取業者がやってくる。
教授は業者の所にも行っていなかったのである。
無理矢理リンクを連れて行こうとする業者を追い返した後、教授の行き先を探るべく研究室に入るジェーン。
そこでは戸棚の中に隠されていたブードゥの遺体と、破壊された教授のメガネを発見する。
リンクに対する疑念を抱くジェーンに、リンクは反抗的な態度を示すようになる。
そして…

リチャード・フランクリン監督がヒッチコックの後継者と呼ばれるのも納得できる、サスペンス映画の佳作、いや傑作です!
敬愛するヒッチコックを意識し過ぎた余り、当時は一部批評家から「猿真似」などと評されていましたが、私はオマージュとして好意的に捉えました。
マットペインティングによる背景描写や、セットを舞台装置のように見せる撮り方など、ヒッチコックファンならではの遊び心が満載。

そんなマニア監督の遊び道具としてだけではなく、サスペンス映画としての出来も素晴らしいです。
連絡手段は断たれ、遥か遠くの町へ行くには野犬がうろつく荒野を抜けなければならない。
そんな陸の孤島に1人残された女子大生と邪悪な知恵を持ったオランウータンの心理戦が見事に描かれています。

恐怖を演出する上で大きな役割を果たしているのが猿の演技。
リンクの目を使った演技は、人間が猿のメイクで演じているのではないかと思えるほど。
お風呂に入ろうとする全裸のジェーンを見つめるリンクのいやらしい目つき!
アカデミー賞をあげたいくらいです。
ちなみに「リンク」「ベビーシッターアドベンチャー」の頃のエリザベス・シューが大好きだった自分も、きっとリンクのような目でこの場面を見ていたかも。。。

お金は掛けなくても、アイデアと演出力で一級のサスペンス映画を取り上げたリチャード・フランクリン監督は天才だと思います。
しかし、その後はなぜかパッとしないまま数本の作品を残してオーストラリアへ帰ってしまいました。
あまりにマニアック過ぎて、商業主義が強い近年のハリウッドではなかなか才能を発揮する場所に恵まれなかったのでしょう。
帰郷後はテレビ映画などを手掛けていたようですが、残念なことに2007年にガンで他界されてしまいました。
もっとサスペンス映画を撮らせてあげて欲しかったです。

それにしてもオーストラリアからは才能のある映画監督が多数現れますが、その後伸び悩んだり、あまり名前を聞かなくなってしまう人が多いように感じます。
個人的に好きなオーストラリア監督の作品は、ラッセル・マルケイ(ハイランダー、エンド・オブ・ザ・ワールド)、フィリップ・ノイス(パトリオット・ゲー ム、今そこにある危機)、ピーター・ウィアー(刑事ジョン・ブック、モスキート・コースト)、P・J・ホーガン(ミュリエルの結婚)、ブルース・ベレスフォード(ドライビング Miss デイジー)などなど。
こういった監督の持ち味が生きた作品をまた見たいなあ…なんて、亡くなったリチャード・フランクリン監督に想いを馳せつつ考えてしまいました。





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