アメ車マニア


チェンジリング(原題:CHANGELING) 

1980年カナダ映画





オカルト映画ブーム後半に生まれた隠れた名作。
昔テレビで一度だけ見てエライ怖かったのを覚えています。
それ以降、レンタルショップでも見かける事もなく、ソフトも入手できな状況が続いていましたが、今年ついにソフト化されて発売になりました!
ちなみに、2008年のアンジェリーナ・ジョリー主演の同名作品とは全く関係ないのでご注意を。


主人公は交通事故で奥さんと娘を亡くした作曲家のラッセル。
トラックに妻子が轢き殺される場面から始まる展開にはびっくりします。

一度に妻子を失った悲しみを振り払おうと、新生活を始める為に借りた古い豪邸。
ところが、移り住んで早々、不思議な現象が発生する。
無人の部屋で鳴り響くピアノ、勝手に開く扉、ドンドンと鳴り響く音、浴槽に沈んだ少年の幻覚…
豪邸を管理している協会に相談するが、古株の女性曰く「人が住めない家」だと言う。。。

女性の言葉に引っ掛かりを感じながら豪邸へ帰ると、突如、屋根裏部屋の窓ガラスが割れて降ってきた。
その部屋の入り口を探すが入り方が分からない。
物置部屋の壁を剥がしてみると、頑丈な鍵で施錠された隠し扉が現れた。
鍵を壊して扉を開けると、そこは埃と蜘蛛の巣に覆われた屋根裏部屋だった。
机や勉強道具、小さな車椅子があり、子供部屋として使われていたのが見て取れた。
埃をかぶったノートには子供の字で1909年の日付が記されていた。
しかし、なぜ屋根裏を子供部屋にしたのか、ラッセルには理解できなかった。

そしてラッセルは子供部屋で見つけたオルゴールを鳴らして愕然とする。
つい最近、自らが作曲した曲と全く同じメロディが、埃まみれの年代物のオルゴールから流れてきたのだ。
屋敷を手配してくれた協会の若い女性クレアに協力を仰ぎ、1909年当時の住人について調査を始める。
当時住んでいた一家には息子と娘がいたが、その娘が交通事故で亡くなった事を突き止める。
怪奇現象の原因はこの娘の霊の仕業と判断したラッセルは、霊媒師を屋敷に呼び、霊との接触を試みる。
しかし、霊はジョゼフと名乗って姿を消した。

交霊会の模様を録音したテープを聞いていたラッセルは、少年の囁き声が記録されている事に気付く。
そして少年ジョゼフの霊は、実の父親に殺された事をラッセルに伝えた。
ジョゼフの父親は、病で車椅子での暮らしを余儀なくされていた6歳の一人息子を自分の跡継ぎには相応しくないと判断し、殺して井戸に埋めてしまったのだった。
その身代わりとして同年齢の少年を孤児院から引き取り、足の治療の為と言って海外へ送り出した。
そして18歳になった偽物のジョゼフはアメリカに呼び戻され、実業家の跡取りとして裕福な暮らしを送っていたのだった。

交霊会でジョゼフの霊が残したいくつかの言葉を元に、彼が埋められた井戸を突き止めた。
民家の床下に隠れていた井戸を掘り返すと、小さな白骨が発見された。

証拠を掴んだラッセルは、高齢となった現在も裕福な生活を送る偽物のジョゼフの元を訪れ、全てを告げる。
偽ジョゼフは、自分に富をもたらしてくれた義理の父を殺人者扱いされ激高。
権力を振りかざして真実をもみ消そうとする老人を哀れな目で見ながら立ち去るラッセル。

屋敷に戻ると、まるで偽ジョゼフに真実を認めさせられなかった事を責めるかのように、ジョゼフの霊がラッセルに襲い掛かる。
炎に包まれる屋敷に殺されかかったラッセルだったが、そこへクレアが現れ無事脱出することに成功する。

そしてジョゼフの霊は、偽ジョゼフの魂を燃え盛る屋敷へと呼び寄せ、老人は屋敷と共に炎に包まれるのだった。。。


物語は交霊会が終わったあたりからミステリー要素が強まり、謎解きが進んでゆきます。
派手な特殊効果や流血シーンは皆無ながら、人の心理を揺さぶるような巧みな演出で恐怖を生み出しているのがお見事。
静かな中に不安を掻き立てる要素が満載。怪しげな豪邸、車椅子、オルゴール、協会の年配女性、交霊会、古井戸、偽ジョゼフなどなど。
特に記憶に焼き付くのが、足の不自由な幼い少年を実の父が浴槽に沈めて殺すシーンの恐ろしさ。
そして、幻覚として現れる水に沈んだ少年の姿はショッキングです。
殺された子供の悲しみが大きな怨念となって終始画面を覆っているように感じられます。

また美術さんがいい仕事をしていて、豪邸の内部の造作がお見事。
壁や柱の装飾が素晴らしく、ついつい目を奪われます。
実際にどこかの豪邸でロケをしたのでしょうか?
屋敷が醸し出す重厚な雰囲気が、恐怖感をより一層高めているように感じました。

特殊効果やびっくりさせるような演出に頼らず、心の底から湧き上がるような恐怖を味わわせてくれる「チェンジリング」。
これぞ正統派の傑作ホラーとして人にお勧めできる作品です。
上辺だけのこけおどしに慣れきったハリウッドや現代のホラー作家に見せてやりたいわ。

ちなみに「チェンジリング」とは、ヨーロッパでは子供をすり替える事を指すらしい。
映画の内容そのまんまのタイトルという訳。

主人公のジョン・ラッセルを演じるのは「ハスラー」「博士の異常な愛情」等の名優ジョージ・C・スコット。
ホラー映画ファンには「エクソシスト3」「炎の少女チャーリー」あたりが記憶に残っている方も多いかもしれません。
そしてクレア役のトリッシュ・ヴァン・ディヴァーはジョージ・C・スコットの奥さんです。

監督はピーター・メダックという人。
テレビ映画を中心に活躍している監督さんで、日本人に馴染みのある劇場用作品は「チェンジリング」と「スピーシーズ2」くらいです。
「スピーシーズ2」は「チェンジリング」と同じ監督の作品とは思えないような出来で残念でしたが、テレビでは「トワイライトゾーン」等のSF・ホラー作品の他、近年もメジャーな作品で活躍中です。
またこんな静かで恐ろしいオカルト映画を撮って欲しいな。

ってな具合に作品は素晴らしいのですが、念願かなってやっと発売されたBlu-rayの画質がイマイチ。
ダビングを繰り返したVHSビデオのようなザラザラした画質です。
アメリカのメジャースタジオ作品だったらこんな画質じゃ発売しないでしょうね。
見る事が出来なかった作品がソフト化されるのは嬉しいですが、こういう隠れた名作もしっかり仕上げて発売して頂きたいです。


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