アメ車マニア


ミッドナイト・ミート・トレイン(原題:THE MIDNIGHT MEAT TRAIN)

アメリカ2008年度作品


「あずみ」「スカイハイ」「ゴジラ FINAL WARS」などを撮った北村龍平監督のハリウッドデビュー作。
原作は何と「ヘルレイザー」の原作、脚本、監督などで知られるホラー作家クライブ・バーカーの同名小説。

深夜、乗客が少ない地下鉄車内。
突然車両は廃線となった線路へと猛スピードで入っていく。
いつもと違う景色に戸惑う乗客に、スーツ姿で巨大な屠殺用ハンマーを持った殺人鬼マホガニーが襲い掛かる。
マホガニーは乗り合わせた乗客たちの遺体をつり革から逆さ吊りにし、列車はさらにトンネルの奥深くへと入ってく。。。
売れないカメラマンのレオンは、ニューヨークの暗部を取り続けているカメラマン。
婚約者マヤとの安定した生活を夢見ながら、危険で刺激的な写真を求めて町を彷徨う。
ある夜、町で見かけたマホガニーに興味を持ったレオンは、彼の尾行を開始する。
マホガニーの勤務先である精肉工場へ侵入し、物陰からマホガニーを覗き込んだそのとき、運悪く目が合ってしまう。
追いかけてくるマホガニーを振り払い、精肉工場からどうにか脱出に成功するレオン。
しかしそれでも彼は懲りずに尾行を続け、ついに深夜のの地下鉄内で人体を解体するマホガニーの姿を目の当たりにする。
その状況をカメラに収める事に成功するものの、気付いたマホガニーに襲われて気を失ってしまう。
目覚めるとマホガニーとカメラが消え失せ、代わりにレオンの胸には奇妙な印が刻まれていた。
その出来事を家に帰ってマヤに話すレオン。
その夜、レオンを心配したマヤは事実を確認するため、カメラを取り戻そうと友人と共にマホガニーの部屋へと侵入する。
しかし帰宅したマホガニーと鉢合わせしてしまい、カメラを取り返せない代わりに彼が狙う地下鉄の時刻表を奪って逃げ出した。
マホガニーの部屋からどうにか逃げ切れたマヤだったが、捕らわれた友人を救い出すため、単身深夜の地下鉄へと乗り込む。
その頃レオンは、自分の写真が飾られた写真展会場に居た。
自ら撮影したマホガニーの写真を眺めていたレオンは、何かを決意したかのように彼も地下鉄の駅へと向かった。
レオンとマヤが乗り込んだ地下鉄内は、被害者の遺体が何体も逆さ吊りにされた地獄絵図。
その中でマホガニーと戦う事になります。

以下、ネタバレいきます!

マホガニーを車外へと放り出し、抱き合う二人を乗せた列車はスピードを落とし停車します。
到着したのは廃墟となった駅。そこは人骨が無数に転がり、まるで地獄のよう。
すると車外から恐ろしい姿の生物が何体も乗り込んできて、吊るされた遺体を食い始めます。
彼らは人類よりも遥か以前から生き続ける特別な存在だったのです。

そこへ傷だらけの姿で現れたマホガニー。
ここで最期の決闘が繰り広げられます。

病気を患っているマホガニーは自分の後継者を探していた訳ですね。それがレオン。
だから気絶したレオンを殺さず、胸に自分と同じ刻印を刻み込んだ。
レオンはその運命を受け入れ、人類の祖先?地底人?地獄から這い出てきた悪魔?のため、
マホガニーに代わって人肉調達係として深夜の地下鉄に乗り込みます。。。

ダークなラストはいかにもクライブ・バーカー!といった世界観を表現しています。
クライブ・バーカーの小説が持つ独特の世界観というのはなかなか映像で表現するのが難しいらしく、
映像化作品で傑作!と言えるのは「ヘルレイザー」を含め数作品のみだと考えます。。
当のクライブ・バーカーも自ら脚本・監督を担当した「ミディアン」で自分の脳内を映像化しきれていなかった気がします。
そんな中でこの「ミッドナイト・ミート・トレイン」は特有のテンポの良さまでも表現していて見事でした。

脚本ではいくつか引っ掛かる点もあります。
一番違和感を感じたのは、レオンはマホガニーの勤務先、マヤは部屋へと不法侵入するところ。
これはちょっとやり過ぎに見えました。
映像化するにあたってはそこまで危険を冒さなければならない理由付けが欲しかったです。
おまけに二人とものん気に構えてキョロキョロしてるからちょっとイライラしたり。
ただね、その侵入シーンは緊張感がMAX!
もう見ているのが苦痛なくらいにハラハラドキドキです!
こんなに怖いシーンは久しぶりに見た気がします。
そんな効果的なシーンだからこそ、観客の納得させるだけの説得力に乏しいのが残念です。

あと部分的に導入されたCGのクオリティが低い!
テッド・ライミ(サム・ライミの弟)が脳天をハンマーで殴られて眼球飛び出し&血が噴き出すシーン。
ご丁寧にスローモーションで見せるんですが、思いっきり「絵」なんですよねえ。
血の飛び散り方なんてスープに浮かぶとき卵みたいだったし。
あと血の質感も赤い水銀みたいなメタリックな感じで、血液っぽさが希薄でした。
地下鉄の走行シーンも実車とCGの場面がはっきり分かるくらい「絵」でした。

でも特殊メイクのクオリティは上々でした。
食べやすいように遺体の歯を抜いて、爪を剥がして…なんていう場面は強烈でした。
下手なCGを使うくらいならもっと特殊メイクを多用して生々しさを強調すれば良かったのに。

ただ全体的に見て最近のホラー映画のレベルとしては良くできていると思います。
日本人監督が海外でこれだけ見事な作品を撮ったという事が自分は誇らしく思います。
北村監督ならではのグルグル回るカメラワークも健在で、ハリウッドでも自分のスタイルに拘っているのがよく分かります。
DVDスルーか?劇場公開か?で相当ゴタゴタした結果、物凄く小規模で劇場公開されたようです。
よく出来てるのにもったいないなあ。

実はわたくし、「ヘルレイザー」公開以降、暫くクライブ・バーカーの「血の本」シリーズにはまっていました。
確か5~6冊出ていたと思いますが、短編集で読みやすいくせに、物凄く物語に厚みがあって満足感が高いシリーズでした。
その「血の本」の第1集に収められていたのが「ミッドナイト・ミート・トレイン」でした。
終電間際の地下鉄の中で読んだら怖すぎて発狂しちゃうかもしれません。

ちなみにレオン役は「ハングオーバー」「特攻野郎Aチーム」などですっかり売れっ子のブラッドリー・クーパー。
殺人鬼マホガニーは「60セカンズ」のスフィンクス役だったヴィニー・ジョーンズ。
またチョイ役で何故か出演しているブルック・シールズにびっくり。
「サハラ」の頃と比べたらすっかりおばちゃんだけど、相変わらずお美しかったです。


<悪魔のサンタクロース-惨殺の斧> <リストへ戻る> <タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら>