アメ車マニア


ハイテンション (原題:HIGH TENSION)

フランス2003年度作品



(2014年4月加筆)

今やハリウッドホラー映画界でトップ監督にまで上り詰めたアレクサンドル・アジャ監督の、アメリカ進出のきっかけとなったパワフルスラッシャームービー。


女子学生のマリーとアレックスは、静かな環境で勉強に専念するために、畑の真ん中に建つアレックスの実家へとやって来る。
家族が寝静まった頃、誰かが玄関の呼び鈴を鳴らした。
アレックスの父親が玄関に出ると、そこに立っていた男が突然殴りかかった。
階段の手摺りの支柱の間に頭を押し込まれて身動きが取れなくなった父親に向け、男は箪笥を押して突撃。頭部を潰して殺した。
騒ぎを聞きつけたアレックスの母親も男に捕まり、喉を深く切り裂かれ、さらに手首も切断されて絶命する。
さらに男はトウモロコシ畑の中に逃げ込んだアレックスの幼い弟もショットガンで殺すと、再び家に戻って来る。
一部始終を息を殺して見ていたマリーは、チェーンで両手足を縛られ、極太の猿ぐつわを噛まされたアレックスを見つける。
しかし解くことが出来なかったため、マリーは助けを呼ぶためにキッチンへ電話を探しに行く。
その間に男はアレックスを担いで自分が乗ってきたシトロエンのトラックに押し込み、チェーンで繋いだ。
男が家の中に戻って物色している間にマリーは包丁を握りしめ、ドアを開けっ放しにしたままのトラックの荷台に隠れる。
男が戻って姿を見せた瞬間に刺殺そうと待ち構えていた。
しかし男は荷台も覗かずにドアを閉め、マリーが乗り込んでいる事にも気付かずにカギをかけてしまった。
二人とも男に拉致されてしまったのだ。

暫く走って男がガソリンスタンドに立ち寄った隙に、トラックのドアのカギをこじ開け、マリーは事務所へと助けを求める。
しかしそこへ給油を終えた殺人鬼が入ってきたため、マリーは店内の商品棚の裏に隠れた。
マリーの訴えを聞いていたスタンドの従業員の素振りに気付いた殺人鬼は、従業員を斧で殺害。
その隙にマリーは店を抜け出し、トイレの中に隠れる。
間一髪のところでマリーに気付かず、男はアレックスを乗せたままトラックで走り去ってしまう。
スタンドに停めてあったフォード・カプリに乗り込んだマリーは、男のトラックを追跡する。
森の中で一瞬見失ったと思うと、トラックはカプリの後ろに回り込んで追いかけてきた。
トラックの追跡をかわす事ができず、ほどなくカプリはジャンプして横転。
走行不能になった車から這い出たマリーは、使われていない荒れたビニールハウスの中に逃げ込む。
追ってきた殺人鬼に、有刺鉄線を巻き付けた棒で殴りかかる。
顔面を何度も殴り、ビニールハウスの切れ端で殺人鬼の顔を押さえつけ、ついに倒すマリー。

その頃、ガソリンスタンドで従業員の死体を見つけた刑事は、店の防犯カメラを確認していた。
そこには、従業員を斧で殺害するマリーの姿が映っていた。。。

殺人鬼を倒したマリーが笑みを浮かべてアレックスの元へと駆け寄ると、アレックスが包丁を向けた。
アレックスの家族を殺したのは、何とマリーだったのだ。
殺人鬼は、アレックスを独り占めしたいと考えたマリーが生み出した別人格だった。
女同士の愛を拒絶されたマリーは、アレックスに円盤状の刃を持った巨大な電動ノコギリで襲い掛かる!


この作品が作られた2003年当時、まだまだ無名だったアレクサンドル・アジャ監督でしたが、「ハイテンション」でその評価は一気に高まります。
3年間の空白の後に発表された次作は、ハリウッドに招かれて撮ったウェス・クレイブン「サランドラ」のリメイクである「ヒルズ・ハブ・アイズ」です。
その後の作品を見ても、この「ハイテンション」同様の冴えわたる恐怖演出、ジェットコースターのようなスピード感溢れる展開は健在。
ホラー映画を一級のエンターテイメントにまで昇華できる貴重なクリエイターだと思います。

アジャ監督を特殊メイクでサポートしたのがイタリアのゴア系メイクの重鎮、ジャネット・デ・ロッシ。
「サンゲリア」「ビヨンド」といったルチオ・フルチ作品の他、フェデリコ・フェリーニ、フランコ・ゼッフェレリ、デビッド・リンチの作品などでも活躍しています。
この「ハイテンション」ではひたすらリアルな特殊メイクを存分に見せてくれます。

マリーを演じるのは、クリント・イーストウッド監督の「ヒアアフター」にも主演していたセシル・ドゥ・フランス。「ヒアアフター」の役名もマリーでしたね。
アレックス役はリュック・ベッソンの「レオン」や「フィフスエレメント」にも出ていたというマイウェン。
ちなみに殺されるガソリンスタンドの従業員は、後にアレクサンドル・アジャがプロデュースしたリメイク版「マニアック」を監督するフランク・カルフンです。

あと車好きとして見逃せないのが、シトロエン・Hトラック。
おしゃれな移動クレープ屋さんなどで活躍しているなごみ系トラックが、何と血みどろの殺人鬼の相棒です(笑)
しかもカーチェイスまで演じさせるとは快挙ですね~。

 


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