オテサーネク 妄想の子供(原題:OTESANEK)
2000年チェコ・イギリス映画
久々に予想を上回るすごい映画でした。
少女が目玉焼きの黄身を舐めているDVDのパッケージも異様でしたが、本編の内容はもっと衝撃的。
チェコの民話を現代に甦らせた…的な宣伝だったので、パッケージの少女を主人公にした「ロスト・チルドレン」「パンズ・ラビリンス」みたいなダークファンタジーを想像していました。
ところがどっこい、「オテサーネク」はモンスターホラーの領域にまで突っ込んでます。
【ストーリー】
不妊症で子供ができないホラーク夫妻。
流産してアパートの部屋で落ち込む妻に気晴らしさせようと、旦那は別荘を購入する。
別荘の庭で手入れをしていると、人間の赤ちゃんのような形状の木の切り株を見つける。
形を整え、冗談半分で妻に見せると、妻は生まれてこなかった息子に出会えたかのように喜んだ。
そして、息子のために用意していた服を切り株に着せ、愛おしそうに抱きしめた。
妻はその切り株を自分達の子供として育てると言い出し、10ヶ月の間、お腹に入れたクッションを少しずつ大型化させながら、近所の住民に妊娠していると思い込ませた。
そして、お腹のクッションが最大になった頃、産気付いた振りをしながら近所の人々に見送られて家を出る夫婦。
病院に入院すると周囲に伝えしばらくの間別荘に妻を隠し、旦那だけ日常生活に戻っていた。
数日後、別荘へ妻を迎えに行くと、妻の想いに応えるように切り株に生命が宿り、赤ん坊のように泣き声を上げていた。
異常な状況を見た旦那は切り株を切り刻もうとするが、命を張った妻の猛反対に遭い、息子として一緒に暮らしていく事を決意。
自宅へ連れて帰ると妻は、オティークと名付けた切り株を人間の赤ん坊のように溺愛した。
しかしアパートの住人達は、オティークの顔を見せようとしない夫妻を不審に思い始めていた。
成長と共にオティークは異常な食欲を示し、見る見るうちに巨大化した。
オティークの止まらない食欲はアパートを訪問した郵便配達員、福祉職員へと向けられ、ホラーク夫妻が目を話した隙に二人を平らげてしまう。
食べ残した骨や惨劇の痕跡を隠蔽するが、相次ぐ失踪事件に警察が動き出す。
これ以上被害者を出さぬため、ホラーク夫妻はアパートの地下にある木箱の中にオティークを閉じ込め、餓死させる事にした。
ところが夫妻の隣の部屋に住む少女がオティークを発見し、親の目を盗んで食料を与えていた。
食料を持ち出している事を親に咎められた少女は、地下へ来たアパートの住人を木箱の前に誘導し、オティークに食べさせた。
ホラーク夫妻も愛するオティークの食料になってしまった。
空腹から暴走したオティークは裏庭のキャベツ畑を荒らしてしまい、アパートの管理人の怒りを買ってしまう。。。
子供に恵まれない夫婦が、生命の宿った切り株を溺愛する、という発想が哀しみと狂気に満ちています。
元になった民話は知りませんが、それを現代社会に置き換えた事で、異常さが際立ったのではないでしょうか。
体をくねらせ泣き喚くオティークの姿は非常にグロテスク。
人間の赤ちゃんの声で泣く醜い生物は、倫理的に嫌悪感を覚えます。
また奥さんのおっぱいに吸い付く姿も夢に出そうなヤバさです。
そんな気持ち悪い生物を中心に進む物語でありながら、悲しさとユーモア、そして日常感までも備えているのがすごい。
ヤン・シュヴァンクマイエル監督の作品はこれが初体験なんですが、他の作品も見てみたくなりました。
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