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デビルズ・バックボーン (原題:EL ESPINAZO DEL DIABLO)

2001年スペイン・メキシコ合作


メキシコ出身の映画監督ギレルモ・デル・トロによるスペイン映画です。
「デビルズ・バックボーン」の方がホラー色が強いですが、2006年に高い評価を得る「パンズ・ラビリンス」との共通点も見え隠れします。

スペインの内戦で親を失った少年カルロスは砂漠の真ん中に建つ孤児院へとやって来ます。
その中庭には巨大な不発弾が突き刺さったまま放置されています。
孤児院は義足の女性院長カルメン、カルメンに想いを寄せる医師のカザレス、荒くれ者の管理人ハチントらが働いていた。
カザレスは「悪魔の背骨(デビルズ・バックボーン)」と呼ばれる脊椎に先天性の異常を持った胎児をラム酒に浸け、滋養強壮効果があるとされる酒を 作り、自ら飲んだり、販売して利益を得ていた。

そんな不気味な孤児院に入所早々、カルロスは少年の幽霊に遭遇します。
幽霊の名前はサンティと言い、以前は孤児院で暮らしていた少年でした。
孤児院の仲間達は幽霊を見たというカルロスの話を聞こうとしません。

ある日深夜の地下室へと忍び込んだカルロスは、再びサンティの幽霊に出会う。
サンティは大勢が死ぬという警告を残して消えます。

管理人のハチントはカルメンが保管している金の延べ棒を狙い、彼女に近付いていた。
しかしその目論見がばれたハチントは力ずくで黄金を奪おうとするが、カザレスの反撃に遭って砂漠へと追放される。

仲間を連れて孤児院に戻ってきたハチントは、黄金が保管してある金庫の周囲に燃料を積み上げ、孤児院を爆破、大勢の子供や職員達が殺されます。
ハチントは以前も金庫破りを試みたのですが、その時はサンティ少年に見つかり、彼を殺してしまった事が明らかになります。
そして生き残ったカルロスの下にサンティの幽霊が現れ、自分を殺したハチントを地下室までおびき出すよう協力を依頼されます。
地下室に呼び出されたハチントと孤児&サンティとの最後の戦いが始まります。。。

オカルト映画だと思って見始めましたが、確かに幽霊は出てくるものの、ホラーというよりダークファンタジーと呼んだ方がしっくりくる作品でした。
見ている人間を怖がらせる事より、謎めいた孤児院に秘められた秘密を、幽霊と共に解き明かしていく事に重きを置いたお話。
そしてそれはサンティ少年の復讐譚でもあります。

特殊メイクアーティストとして映画界に入ったギレルモ・デル・トロ監督らしく、サンティ少年のビジュアルはなかなか強烈です。
ひび割れた顔面、パックリ割れた額からは常に血が噴出し(?)ています。
でもサンティ少年以外の特殊効果は控えめです。

タイトルになっている「悪魔の背骨」ですが、ストーリー上は意外なほどサラッと流されています。
でもバックボーンを背骨ではなく「悪魔の背景」と訳して、「戦争という悪が異常な世界を形成する大本になっている」というメッセージが込められて るのかな?なんて無理矢理に解釈してみたり。
ギレルモ・デル・トロ監督も、外で起こってる事の縮図として孤児院を描いたとインタビューで答えていましたしね。でも本当にそうかは分かりませ ん…。

あと、えらく象徴的で圧倒的な違和感を放つ庭の不発弾も、ただそこにあるだけで何も起こらず。
それが何を意味するかははっきりさせません。
孤児院の不穏な空気を演出するための単なる小道具ならそれでいいんですが、それ以上の意味があるのならば私は読み取れていませんです…。

でもそういった一つ一つの小道具やエピソードが、えも言われぬ不気味な雰囲気を終始醸し出しているのは事実。
息が詰まりそうな重苦しさの中から滲み出してくる悲しさは、ギレルモ・デル・トロ監督ならではの味わいです。

最近のギレルモ・デル・トロはハリウッド大作の仕事が増えていますが、個人的にはひねりの効いたホラーやダークファンタジーをもっと撮って欲しい です。
製作総指揮の「永遠のこどもたち」「ロスト・アイズ」なんかも良くできた作品でしたし。

 


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