アメ車マニア


「V/H/Sシンドローム」(原題:V/H/S) 

2012年アメリカ映画





主人公が撮影した動画を見ながら、観客も登場人物と一緒に物語を追体験してゆくPOV方式で撮影されたオムニバスホラー。
「食人族」や「ブレアウィッチ・プロジェクト」のように撮影者が行方不明になり、発見されたフィルムを見ながら彼らの運命を辿るファウンド・フッテージスタイルです。
お話ごとに監督が異なっており、それぞれ新鋭のクリエイターが制作していますが、現時点では日本で馴染みのある人たちではありません。
若さゆえの荒削りさは見え隠れするものの、ほぼ無名の新人監督の割に手堅くまとめており、それなりに楽しめる作品に仕上がっています。


「TAPE56」 アダム・ウィンガード監督
これがプロローグです。
自分たちの犯罪行為をビデオで記録して楽しんでいる悪ガキ集団。
羽交い絞めにした女性の服をまくり上げた姿を撮影して逃走したり、無人の住居に忍び込んで破壊したりしてはバカ騒ぎしていた。
そんなメンバーの一人が、ある住居に忍び込んでVHSのビデオテープを盗み出せば高額な報酬がもらえるという仕事を請け負ってくる。
彼らは郊外の一軒家へ忍び込んでVHSテープを探していると、その一室で老人が死んでいた。
老人の前には数台のテレビとビデオデッキ。
悪ガキたちは手分けをしてそのビデオテープに記録された内容を確認していく。。。

「AMATEUR NIGHT」 デヴィッド・ブルックナー監督
男三人が、女性との出会いを求めて夜の街へと繰り出していく。
クラブで二人の女性と知り合った三人は彼女たちを連れ、五人でモーテルの一室に入った。
一人の女性は酔い潰れて早々に意識を失ってしまい、残る一人の女に男たちが迫った。
すると女の身体に異変が表れ始め、額が裂け、突如凶暴化して男たちに襲い掛かった。
部屋から一人逃げ出した男を背後から襲ったのは、背中に羽を生やした悪魔のような生物だった。。。

「SECOND HONEYMOON」 タイ・ウェスト監督
アリゾナの荒野を車で旅する若い夫婦。
夜、二人が宿泊しているモーテルの周りを不審な女が徘徊していた。
夫婦が寝静まったあと、部屋に忍び込んだ何者かがカメラの電源を入れ、眠っている二人の姿を撮影する。
侵入者は二人を観察した後、旦那の財布から現金を抜き取り、彼の歯ブラシをトイレの水に浸けてから元の場所に戻し、部屋を出て行った。
翌日の夜、また何者かがカメラの電源を入れる。
そして、眠っている旦那の首にナイフを突き刺した。
殺害後、洗面所で血まみれの手を洗う女殺人鬼にキスしたのは、殺された男性の妻だった。。。

「TUESDAY THE 17TH」 グレン・マクエイド監督
男女二人ずつ四人の若者が、人気のない森で休日を過ごすためにやって来る。
しかしその森は、過去に謎の連続殺人事件が起きた場所だった。
手始めに一組のカップルが姿の見えない存在に惨殺される。
残った女は、自分はその惨劇の唯一の生存者で、殺人鬼の正体は悪魔だったともう一人の男に告げる。
その悪魔を倒すためにここに舞い戻った事と、連れてきた三人の友人は悪魔を呼び出す為のエサだった事も告白する。
そこへ悪魔が現れ、その男性の喉元を切り裂いた。
そして悪魔は残った女にも迫るが、事前に仕込んでおいた罠に悪魔を誘導し、何とか倒したかに見えた。
ところが悪魔の身体は分裂し、女を切り裂いてはらわたを引きずり出す。。。

「THE SICK THING THAT HAPPENED TO EMILY WHEN SHE WAS YOUNGE」 ジョー・スワンバーグ監督
Skypeのようなテレビ電話で会話を楽しむ遠距離恋愛中のカップル。
しかし彼女のエミリーは一人暮らしの部屋に異変が起きていると言う。
怯えながらカメラに向かって不安を訴えるエミリーの背後を、緑色に光る子供のような影が走り抜ける。
怪奇現象は日に日に酷くなり、ついには暗闇の中に複数の子供たちが現れた。
その子供たちが放った光で失神させられたエミリー。
そこへ、遠く離れた所にいるはずの彼氏が現れる。
彼は気を失ったエミリーの腹を切り裂き、中から胎児を取り出し、子供たちに手渡した。。。

「10/31/98」 レイディオ・サイレンス監督
ハロウィンパーティをするために民家へ向かう四人組の男たち。
到着した会場の家で呼びかけてみるが応えがない。
無断でその家に入り込むと、数人の男たちが少女を縛り付け、殺そうとしていた。
その時、見えない力が少女を囲む男たちを壁に叩き付け、四人組はその隙に少女の縄を解いた。
しかし家は四人と少女を外へ出すまいと、様々な怪奇現象を引き起こして抵抗を始める。
地下室の木製の扉を破壊し、どうにか外に出た五人は車に乗ってその場を立ち去った。
しばらく走って踏切に差し掛かると、線路の上で車が立ち往生してしまう。
そして気付くと少女の姿は車内から消え、ドアが施錠された車に列車が迫る。。。

「TAPE56」の続き
地下室でVHSテープを探していた男がビデオデッキの部屋に戻ると、そこには首を切断された仲間の死体が転がっていた。
そして、蘇った老人の死体が襲い掛かる。。。
(これがエピローグだと思うんですが、実際には上の「10/31/98」というお話の前に挿入されています。)


ストーリーは荒削りで、説明不足だったり分かりずらい部分がありました。
ただ、モキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)として考えれば、何でも説明が行き届いているのは逆にリアリティを削ぐ原因にもなりかねません。
また実際にこんな怪奇現象に出くわしたら、きっと何だか訳が分からないうちに殺られちゃうのでしょうから、状況説明はこれくらい雑(?)で丁度良かったのかも。

特殊メイクも特に有名な人は関わっていないようですが、残酷描写は結構頑張ってました。
腹や喉元を切り裂いたり、内臓を引きずり出したり、眼球を飛び出させたり、生首を転がしたり。
手ブレ映像で粗が目立たなかったってのもあるかもしれませんが、割とリアルだった気がします。

新人が作った低予算B級ホラーとしては十分に楽しめましたが、とにかく手ブレが酷くて見てて気分が悪くなりました。
POVだから仕方ないんですけど、それにしてもカメラをぶん回すにも限度がある。特にオープニング。
乗り物に強い自分も酔うほどなので、酔いやすい人は見ない方が良いかもしれませんです。

 


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